はじめに
事故が起きれば損害賠償責任も
――住んでもいない家にコストをかけたくないと、放置してしまう人の気持ちはわからなくもありません
放置空き家の問題のひとつは、近隣トラブルや損害賠償責任の原因になるということです。
2015年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」によって、行政は問題のある空き家に対して必要な措置を取ることが可能になったわけですが、法律が浸透するにつれ、一般の人が苦情を行政に訴えやすくなりました。
――ご近所トラブルの原因になるんですね
放置していれば、雑草が生い茂り、庭木の枝が道路や隣家にまで伸びる。虫が発生したり、ハクビシンなどの動物が棲みついたり。景観や治安が悪くなるばかりでなく、衛生的な問題が発生し、近隣へ迷惑をかけることになります。
――自分がお隣さんだったら、いやです
また、家屋の倒壊の危険も生じます。屋根の瓦が落ちて隣家の車を傷つけるくらいでしたらまだいいほうで、ブロック塀が崩れて近隣の方にケガをさせてしまうなんてこともある。そのとき、管理責任は所有者に問われます。「空家等対策特別措置法」は、空き家の所有者は適切に管理する責任がある、と明確にしています。「遠方に住んでいてわからなかった」というのは理由にならないのです。
――賠償金の負担だけでなく、精神的にもダメージが大きそうです。
それだけではありません。放置すればするだけ、資産価値は目減りしていくんです。将来的に中古住宅として売りたいと考えていたとしても、空き家である期間が長ければ長いほど家は傷んでいきます。早く売れば建物も十分評価されたのに、5年6年と空き家にしてしまったことによって、修繕する必要が生じたり、土地の価値しか評価してもらえなかったり。
賃貸に出すという場合も、1年以上も放置していたら、水回りなどはダメになってしまうので、お風呂やキッチンなどの高額のリフォーム費用がかかる可能性があります。そろそろ、具体的に利活用をと動き出しても、必要なお金を工面できないといったこともあるわけです。
――で、結果、やっぱり放置、と
この先、不動産価格がどんどん上がってくとは考えにくく、将来的に売ろうと思っているのであれば、早い時期に売ってしまったほうがいい。賃貸を考えている場合も同様です。早く備えることで、近隣トラブルや損害賠償責任を回避でき、資産価値を維持、経済的負担を抑えることができます。