はじめに

1月8日の日経平均株価の終値は2万8,139円となり、30年5ヶ月振りの高値となりました。2021年の株式相場も出だしは好調です。

一方、足元の景気はコロナ禍で厳しい状況です。7日には東京、千葉、埼玉、神奈川を対象とした緊急事態宣言が出され、14日には対象地域が11の都府県に拡大されました。経済活動の停滞は長引く可能性もあります。

こうした実態経済や社会環境を考えると、“足元の株価は買われすぎじゃないか”と見る投資家も少なくはありません。しかし、今後の新型コロナワクチン接種の本格化もあり「コロナ禍の終息→将来の景気回復の期待」から、投資家が株式投資に“前向きな姿勢”であることが足元の株高を支えています。

とはいえ、こうした“前向き姿勢”は“冷静な判断”に基づいているのでしょうか。人間なら誰しも、嫌なことがあってもカラ元気を振舞ったり、ポジティブなことだけを考えようと見ない振りをすることもあります。

でも、人にもよりますが、そんな状況って長続きしないですよね。

“冷静”に状況を判断するのは、人間にはなかなか難しいかもしれません。こういった分野では機械やAI(人工知能)が大いに活躍できます。そこで今回は市場の心理などを冷静にAIが判断するとどのようになるのか、を紹介します。


市場の“感情”を分析する方法

近年、AIもどんどん進化し、文章を読んだり書いたりできるようになってきました。AIが文章を読んで“前向き(ポジティブ)”か、それとも“後ろ向き(ネガティブ)” かを判断することを専門用語で感情分析と呼びます。感情を持たないイメージの機械があえて感情を分析するのですから、冷静な判断が出来るわけです。

感情分析の方法を簡単に言うと次のような流れです。まず、文章を構成している1つ1つの単語に分解します。次に、それぞれの単語が使われるのは、人々が前向きな気持ちの時か後ろ向きな時かに分類します。最後に、前向き/後ろ向きのどちらの単語が多く使われているかで、文章全体の前向き度合いを判断するのです。

ここで注意点があります。前向きな単語といっても、その前向き度合いにも違いがあるのです。

例えば、「急回復」と「回復」の2つの単語を考えて見ましょう。どちらも前向きな表現ですが、急回復の方がその度合いは大きそうですよね。ですから前向き単語と後ろ向き単語の個数を単純に集計するのではなく、出てくる単語の度合いを合計します。

では、その度合いはどう決めたら良いのでしょうか。この度合い算出にAIが使われます。東京大学 和泉・坂地研究室では金融極性辞書というものを公開しており、誰でも使うことができます。

例えば、同辞書によると「増大」の極性値は0.49、対義語となる「減少」は−0.71となっています。前向き単語がプラス、後ろ向き単語がマイナスです。「極性値」というのは専門用語ですが、前向きの極に近ければプラス、後ろ向きの極に近いとマイナスとなるものです。

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