はじめに

驚きの静粛性の高さ

アウディにとって日本で初めてのBEVは、スタートボタンを押すと、なんともあっけなく立ち上がりました。もう慣れましたが、ここまでは家電品かパソコンのような操作感覚です。ブレーキに右足を載せ、シフトセレクターをスライドさせてDレンジに入れます。このスライド式セレクター、デザインも未来感があっていいし、操作性もスマート。味気ないスイッチという感じではありません。こうした細かな部分でもアウディクオリティがチラチラと顔を見せるのです。

さっそくアクセルを踏み込んでそろそろと走り出しました。2.5トンのボディだと言うことも、大柄であることも、感じさせないほど静か。なんだ、この静粛性の高さは……。かすかに周辺の街の雑踏は聞こえてきますが、少しオーバーかも知れませんがオーディオルームのような静寂とともに走り出したのです。

BEVはすべて静か、という評価はすでに定着しているのですが、e-tronのそれは、ガソリン車なども含めてもトップクラスにあるでしょう。このクルマには「サイレンスパッケージ」が標準装備されていて、風切り音を低減しているのです。さらにボディの遮音性も高く、キャビンは快適そのもの。お気に入りの曲を入れたメモリースティックをもってこなかったのを、後悔しました。

静粛性の高さの次に感じたのは“しっとりとした乗り心地”です。この印象は走り出しからズッと感じていました。さすがにこれだけの大きさと重量があると、市街地でクイックにキビキビと、という走りではありません。しかし、ボディの揺れもスッと収まり、ステアリングにもしなやかに反応し、とても穏やかな気分になれるしっとり感です。さらに信号待ちなどで前方が開いたとき、アクセルをグッと踏み込んだのです。これまでのイメージどおり、強烈なトルクを低速から発揮して、グングン加速していくのですが、こんな時でさえもソフトで優しい感覚があるのです。

アルカンターラを座面などに使用したスポーツシート

この印象は高速に乗り込むとさらに輝きました。前後の揺れ、つまりピッチングの収まりも良く、優雅な乗り心地。さらに直進安定性の高さは絶品でした。やはり2,930mmという長いホイールベースと、サスペンションのセッティングの上手さによるものです。

そうしてもう一点、e-tronは約700kgのバッテリーを前輪と後輪の間のフロア下に積んでいます。走りを始め空調など、多くの電力消費をまかなうためにはこれだけのバッテリーが必要だったわけですが、この重量があればこそのしっとり感だったといえるでしょう。本当にどこまでも走り続けたくなる走行性能でした。