はじめに

力強く、そして高級な走り

さっそく8段ATのシフトセレクターをドライブに入れると、ゴクンと小さなショックを感じてスタンバイ完了です。とは言ってもここは市街地ですから、アクセルをそっと踏み込んでスタートします。なんともすんなりと、凶暴さなど微塵も見せることなく走り出します。スポーツやオフロードとか、いくつかドライビングモードは選択できるのですが、ここではもちろん「オート」モードで走ります。

レンジローバー伝統ともいえる良好な乗り味とシームレスな加速感で東京の町中を走り抜けます。カーボンをまとった見た目は少しばかり派手ですが、乗っているこちらは実に優雅な気分のまま過ごすことが出来るのです。

「もう本当にこれでいいや」と、何度も気持ちが日和りそうになったのですが、せっかくのチャンスですから575psのパワーと700Nmのトルクの片鱗だけでも味わおうと、高速に入ります。料金ゲートを過ぎ、加速区間で一気にアクセルを踏み込みます。5リッターV型8気筒スーパーチャージャーのエンジンが一気に目覚めました。2.5t近いボディだと言うことなど一瞬のうちに忘れるほどの加速感のまま、瞬時に速度制限です。

優しく、しかしガッチリと体をホールドしてくれるシートは長距離でも疲労感は少なくなります

いえ、まだまだほとんどアクセルを踏み込んだ覚えがないというのにこれです。はっきり言ってこの実力をスペックの通りに試すことなどサーキット以外にありませんが、圧倒的な速さを持っていることだけは十分に理解できるのです。

ハッとして走行モードを見ると市街地などを走ったオートのままでもこれです。首都高速から東名に入ったところでハードな走りを実現してくれる「ダイナミック」モードにセットしました。足はビシッと締まり、硬さを感じますが不快ではありません。ロールも少なめですが、ドイツのSUVなどとくらべるとソフトに感じます。その走りは実に安定感があり、4輪でガッチリと路面をつかんでいる感覚と共に、なんとも極上の安定感ある走りを示します。

さらにワインディングでも、しっかりと粘りながらの硬さを感じながらヒラリヒラリとコーナーを抜けていきます。この時に「これがカーボンの利点なのかなぁ」と感じさせてくれる場面があります。なんとも心地いいフラット感と共に、コーナーを駆け抜けることが出来るのです。重心の高いSUVにとって、軽さは一般のスーパースポーツ以上に効果を感じさせてくれます。

全行程の7割以上の場面でオートモードのままで走ったのですが全体の印象は「なんともジェントリーな走り」でした。でもその根底にあるのはトップレベルの力強さ。その姿を見ているとカーボンというラガーシャツを着た優しきラガーマンという印象を持ちました。

エンジンカバーにもフルカーボンを贅沢に使用しています

そして2021年モデルのSVRにはカーボンエディションが出来ました。価格は1,921万円と発表されていますが、今回試乗した仕様ほどの豪華装備ではありません。どれでもカーボンをしっかりと着込んで、カッコ良く駆け抜けたい人には少しお買い得なモデルのような気もしますが……。と言ったところでふと我に返ったとところで、一瞬にして現実に引き戻されました。

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