はじめに

市場がめまぐるしく変化するなか、ビジネスモデルを見直したり、商品やサービスのテコ入れをして売上を伸ばしているのに、いくら売っても「儲け」が出ない会社があります。いったい、なぜなのでしょう? 公認会計士・税理士の梅田泰宏氏は「厳しいときこそ、正しいコスト(原価)意識を持つことが大切」と説きます。どうやら、経営の原点に立ち返る必要がありそうです。
※本稿は『知らないとヤバい「原価」と「黒字」の法』をもとに一部抜粋・再編集しています。


経営不振につながる「ヤバい状態」

まず、みなさんのお店や会社の現状について思い起こしてみましょう。
日々の業務におわれ、こんな状態を放置していませんか?

□削ってはいけないコストを削って利益を減らしている

□接待交際費の基準が曖昧なうえ、業界平均値よりも多い

 

では、営業や販売のほうはいかがですか?
とにかく数字を出そうと、どこかでムリをしていないでしょうか。

□「売ることが仕事だから」と原価に無関心なまま

□原価割れになるような値引きをして売上を上げている

□原価を下げようと大量生産をして売れ残っている

これらのうち、1つでも思い当たることがあるなら要注意。

そう、これらはすべて経営的にみて 「ヤバい人」「ヤバい会社」 の特徴です。

「入るを量りて出ずるを制す」の実践

会社が利益を上げるには、簡単にいえば、次の2つの方法があります。

①売上を上げる

②コスト(原価)を下げる

とはいえ、現状のまま、売上をアップさせるのはなかなか難しい状況です。そこで、コストダウンが必要になってきます。「入(い)るを量りて出(い)ずるを制す(収入を正しく把握し、それに見合った支出をする)」——古くからいわれてきたとおりですね。

戦後最長といわれた日本の景気拡大は、実は、2018年の10月に景気の山を迎えていたといわれているものの、その前の景気の山から71か月だったので、戦後最長記録の更新にはならなかったようです。

この景気拡大期間は、個人の所得が伸びず、個人消費も伸び悩む「実感なき景気拡大」でしたが、それに輪をかけるように、日本は景気後退局面に入っているわけです。

その景気後退に追い討ちをかけるように、経験したことのない大きな災害や、これも経験したことがない世界的な感染症の流行などが続きました。しかし、それらがなかったとしても、日本の景気後退の状況に変わりはなかったことでしょう。

このような経済情勢で、いま企業に求められているのは「コスト・マネジメント(原価管理)」の視点です。売上が伸びず、かといって価格を下げて売ろうとすれば、今度は利益が減ってしまいます。

利益を確保するには、コスト(原価)をきちんと管理し、コストダウンを図るしかありません。これまで原価に無関心だった営業職の人も、総務・労務・経理といった事務職の人も、原価に対する強い意識、すなわち「コスト意識」を持つことが求められているのです。この状況は当分の間、変わらないでしょう。