はじめに

主要な物価指数がは前年同月比でマイナスが続いています。直近の数字を確認すると、1月分全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比は▲0.6%で、6カ月連続マイナスです。

スーパーの価格動向を表している日経ナウキャスト日次物価指数によると、3月10日のT指数(POSデータを活用した物価指数)は前年比(7日平均)▲0.26%でした。

また、T指数を月次でみると、12月分+0.33%、1月分+0.16%、2月分+0.12%と上昇率が鈍化してきました。スーパーでは消費需要を喚起しようと値引きをする動きがあるという報道もみられました。

この先の物価動向を考える上で「前年比」は欠かせませんが、今年は注意が必要です。どういうことか、具体的な統計数値を用いて検証します。


直近の物価指数からは「デフレ気味」継続と判断か

1ヶ月早く中旬速報値が発表される東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の2月分・前年同月比は▲0.3%で、こちらは7ヶ月連続マイナスです。2月分企業物価指数・前年同月比は▲0.7%で12ヶ月連続マイナスです。そして1月分企業向けサービス価格指数・前年同月比は▲0.5%で4ヶ月連続マイナスです。

直近の物価指数前年比を表面的にみると、デフレ気味と解釈されることが多いでしょう。
このようなスーパーの商品の値動きや、主要な物価指数の動きを耳にする中では、「物価は上がりそうにない」と思っている人が多くても不思議はない状況だと思われます。事実、物価に関するアンケート調査の中には、こうした傾向を裏付けるものがあります。

原油価格の先行きを考えると、マインドに変化も?

誰でも調査に参加できる、内閣府の「消費者マインドアンケート調査」では、1年後の物価上昇に関して、「景気ウォッチャー調査」と同様の5段階で聞いています。「景気ウォッチャー調査」でDIを作成する時には、0.25刻みでそれぞれ1から0までの点数を与え、これらを各回答区分の構成比に乗じてDIを算出します。

「景気ウォッチャー調査」と同様の方法で「消費者マインドアンケート調査」の1年後の物価上昇に関してDIを作ると、調査開始の2016年9月から2021年1月まで64.3~79.3の間で推移してきましたが、2021年2月は60.0と過去最低になってしまいました。

全員が「変わらない」と回答すると50.0になるので、DIは50が物価上昇か下落かの判断の分岐点になります。60.0は上昇するという見方がかなり弱くなっていることを示唆すると、言えるでしょう。

しかし、入着原油価格(原粗油)の前年同月比を見ると、先行きに大きな変化が生じそうです。

財務省の貿易統計によると、2月中旬分の入着原油価格は37,288円/klで前年同旬比▲22.9%(前年の速報値比)の下落でした。1月の32,624円/kl・前年同月比▲32.5%の下落から、価格の水準は上昇しましたが、前年同月比は依然2ケタのマイナスです。

しかし、先行き4~6月になると前年同月比は大きく変わると思われます。現在、WTIなどの原油市況は上昇傾向にあり、ドル円レートもやや円安気味です。そうした状況下で入着原油価格が横ばいで推移すると仮定するのは、相当慎重な見方だと思います。

仮に、入着原油価格が2月中旬分と同じ水準で先行き継続すると仮定しても、前年に水準がコロナ禍で大変動した反動が出ます。3月は▲11.7%程度の2ケタの下落ですが、一転して4月は+29.3%程度の2ケタ上昇になります。

さらに5月は+121.8%程度、6月は+124.0%程度と倍以上に上昇率が高まります。足元、人々の物価見通しはデフレ気味ですが、原油価格の高い上昇率が意識されると、人々の物価見通しの方向が逆方向に変化するかどうか、注視することが必要でしょう。