はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する野瀬大樹氏がお答えします。

今年から、あるNPO団体の活動支援として、少しずつ寄付を行っていこうと思っています。そこで「寄付金控除」について質問です。いろいろサイトを見てはいるのですが、寄付金控除の計算がいまいちよくわかりません。また、制度についても、あまり理解ができていない状態です。


自分の収入の一部を寄付することに問題はないのですが、もしなんらかの方法を駆使して税金が安くなるのであれば、浮いたお金をまた寄付金にできると考えています。私の年収は手取りで220万円から230万円程度です。田舎に住んでいますので、ひとまずこの金額でも生活していけます。「控除」の意味もわかっているようで、きちんと理解できていない自分が不甲斐なく、税金の勉強もこれからしていきたいと思っています。寄付金控除の考え方と注意点、また税金の勉強におすすめの本があったら教えてください。
(40代前半 独身 女性)


野瀬: 寄付金控除を理解するためには、まず所得税の計算方法を理解しましょう。私たちが負うべき所得税は基本的に以下の公式で計算されます。

(収入 − 経費 − 所得控除) × 税率 − 税額控除 = 所得税額

通常、お勤めの方や年金生活者の方の場合は、税金を軽減する効果がある「所得控除」や「税額控除」を、積極的にコントロールすることができません。

たとえば、お仕事で使うためのパソコンを買ったとしても、基本的に税額の減少などの影響がないのです。ただし、「寄付」を行う場合は話が違います。

寄付金控除の仕組み

寄付すると、その金額分を「控除」として、上記の公式の「所得控除」や「税額控除」に入れることができるので、その結果、所得税額が少なくなる、つまり得するということになるわけです。これが「寄付金控除」です。

ご質問者の方の場合、特定のNPO団体への寄付とおうかがいしていますので、おそらく税制的に有利な「税額控除」が適用されると推察されます。

たとえば寄付金額が10万円ですと、寄付金額「10万円 − 2000円 = 9万8,000円」、この9万8,000円に40%を乗じた金額を、税額控除に加算することができるため、税額が3万9,200円少なくなる。つまり結果として3万9,200円分の税金が還ってくることになるのです。これが寄付金控除の仕組みです。

ただし、この「還ってくる税金」はもちろん「すでに取られた税金」であることが条件です。

勘違いしている方が多いのですが、この寄付金控除は「寄付をするなんて偉い。ご褒美をあげよう」という趣旨ではなく、あくまで「寄付した分は税金計算時に考慮してあげよう」というものです。

そのため、一旦取られた分しか還ってこないものとなります。天からお金が降ってくるわけではないのです。

支払う所得税額との関係にも注意

ここでいう「一旦取られた分」というのは、毎月のお給料から差し引かれる所得税の源泉徴収で差し引かれた分ということになります。

さらに、「税額控除」には、「その年分の所得税額の25%相当額を限度とする」というルールがあり、支払う所得税額に応じて寄付金控除の上限額が定められています。

質問者の方の場合、年収が200万円から230万円とおうかがいしておりますので、社会保険なども加味すると所得税額は年額で4万円程度といったところでしょうか。

そうなると還付される税金の上限は1万円程度ということになります。そのため、寄付金控除でお金が還ってくる寄付の上限は、概ね2万5,000円程度です。

もちろん、これ以上、寄付することはできますが、寄付金控除の恩恵はありませんので、この2万5,000円というのをひとつの目安としてもいいかもしれませんね。

また、NPO法人によっては市区町村から個別に指定を受け、寄付を行うことで住民税も安くなる可能性があります。対象となるNPO法人に確認を行ってください。

最新の確定申告本が便利

最後に税金に関するおすすめ本ですが、難しいですね。

当然、私の著書である『自分でできる個人事業主のための青色申告と節税がわかる本』を挙げたいところですが、こちらは簡単とはいえ、基本は個人事業主向けであり、サラリーマン向けの本ではありませんので、ほかの本にしようと思います。

正直に申し上げて本当の意味で税金の概要を知りたければ、毎年11月ぐらいから書店に並ぶ、確定申告のムック本が一番コスパがよいような気がします。

なぜなら、毎年、最新知識にアップデートされていますし、投資家や個人事業主を意識した市販の本と比べ、サラリーマンの確定申告に特化している部分が多いからです。価格も1,200円程度で手に入るため、個人的にはおすすめいたします。

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