はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
医師になってから、がむしゃらに働く毎日で、毎月勝手に振り込まれるお給料が気付けばけっこうな額になっていました。普通預金に現在3,500万円ほど貯まっています。また、約10年前に銀行から勧められるまま個人年金に入り、そろそろ満期の時期が近づいています。
4年前に結婚し、1歳半の子供がいますが、もう1人ほしいと考えています。夫は普通のサラリーマンからフリーランスになり、今のところの年収は500万円程度。私は子供が生まれてからはパート勤めをしており、年収300万円ほどです。しばらくはこの世帯収入になると思います。この春から、お給料を夫婦でまとめて管理することにしました。しかし、お互いの資産額は夫婦間で明かしていません。いくつか気になっている点がありますので、具体的にご指導いただけたら幸いです。
1:自分自身の資産をどのように運用するのか
2:資産運用については、誰に、どう相談すればよいのか。銀行に相談すべきなのか、それともFPを探し定期的に相談するのか。
3:現在の住まいは賃貸アパートなので、マイホームや教育資金なども含め、今後、夫婦で具体的にどれくらい貯蓄すべきなのか。
どうぞよろしくお願いします。
(40代前半 既婚・子供1人 女性)
野瀬: 私は男女問わず大学生と話す機会があるのですが、個人的には女性にこそ「資格」を使う職業をおすすめしています。
確かに昔に比べると女性の社会進出が進み、会社も出産や育児をサポートするようになりましたが、キャリアという面から考えると、女性が不利になる現状がまだまだ存在します。
その点、資格を要する仕事の場合、職場復帰もしやすいですし、また質問者の方のようにパートという時間で区切った働き方も選びやすいです。
そういた資格を持った女性が、当初は収入が安定しないフリーランスの男性を支えるという夫婦形態は、今後より増えていくかもしれませんね。
夫婦の資産はお互いに把握した方がいい?
さて、そんなご夫婦の資産管理について考えていきましょう。
個人年金の額や、ご夫婦の年齢などがわからないため、推測でお話するしかないのですが、まず質問者の方がおかれた現状について確認しましょう。
現在の資産
ご自宅は賃貸とおうかがいしておりますので、借金・ローンはないかと思います。その上で、預金が3,500万円。加えて個人年金があるため現在の資産としては、同世代と比べて、かなり手厚い状態になっています。
現在の収入
夫婦合算で800万円あり悪くはないのですが、今後2人目のお子さんを出産・育児することを考えると、この先5年ぐらいは収入が下がって、支出が増える可能性があります。収入面に関しては我慢の時間が続くのかなと思います。
そうとなると資産の運用によって、なんとか収入を助けたいところなのですが、その際に気になるのが、この充実した資産状況をご主人に開示すべきかどうかです。
夫婦とはいえ、質問者の方ががんばって稼いだ大切な資産ですので、その点は悩ましいところかと思います。
結婚前の資産は夫婦共有のものにはならない
私の考えでは、夫婦の収入については公開すべきだと思いますが、資産面、特に結婚前からのものについては明かさないほうがよいと思います。
結婚前の資産については、法律上も夫婦共同で稼いだものとはなりません。
なにより心配なのは、3,500万円以上の金融資産があることにご主人が気付いた場合、人間は弱いものなので、その資産をアテにした人生設計をしてしまう可能性が高いということです。
私自身フリーランスですのでよくわかるのですが、事業の資金がひっ迫し、自分の取り分すらままならないときは必死で働くのですが、ある程度、黒字で回り、生活が脅かされない状態まで売上が伸びた場合、急に仕事への情熱が冷めてしまうのです。
そのため私は常にひっ迫した状況を作り出すため、事業に余裕がでると、あえて人を雇って経費を払う、そんなかたちにしています。
ご主人は勤め人からフリーランスに転身したばかりとおうかがいしていますので、今が一番大切な時期です。ご主人に全力で乗り切ってもらうためにも、資産の話は隠しておいたほうがよいのではないでしょうか。
こちらの資金はご自身の老後や、事故や病気など、もしものときのための資金と考えておけばよいと思います。
夫婦で一緒に資産運用するなら
さて、これらを踏まえ、いただいていたご質問にお答えしましょう。
1.具体的にどう運用するか
これは以前、私が実際にやっていた方法なのですが、4つのステップでご紹介しますので参考になりましたら幸いです。
(1)生活をすべてご主人のお給料で賄えるように生活費を調整します。
(2)奥様のお給料のうち半分は貯金に、半分は投資用の資金としてプールするかたちで、毎月自動的に用途に応じたお金の置き場所を変えます。
(3)まず生活費の見直しを行い、家計のスリム化を図ります。固定費中心に見直しを行い、恒常的にお金が貯まる仕組みを作ります。
(4)そして残りの投資資金で運用を始めます。
質問を拝見する限り、まだまだ投資初心者だと思いますので、最初は積立型の投資信託を月1~2万円程度買うくらいでよいと思います。
最初から前のめりになって、ガツンと投資しようとすると、大概は失敗するからです。また「投資用資金」といっても、このお金をすべて使って株や投資信託を買う必要はありません。
私の考えでは、マイホームも立派な投資商品ですので、一部はマイホーム資金として考えてもよいでしょう。
2.相談相手は誰がいい?
貯金や住宅ローン、保険などに関しての相談相手はFPさんでよいと思います。ただ、FPのなかには自分に手数料が入る商品ばかり勧めてくる方もいらっしゃるので、個人的には有料相談を行っているFPのほうがよいと思います。
「無料家計相談会!」というチラシやポスターをよく見ますが、FPの方も、霞を食べて生きているわけではありません。どこかでお金を貰わないと生きてはいけないので、タダには理由があるのです。
無料相談でひも付きの商品を勧められるよりも、有料で公平な立場からアドバイスしてくれる方のほうがよいと思いますので、こちらを検討してみてはいかがでしょうか?
3.教育資金とマイホーム
教育資金および老後資金に関しては、貯金で賄うのがよいと思います。
2人目のお子さんが小学校に上がるぐらいになると、質問者の方のパート時間も増やせると思いますので、そのころから資金の増え方は加速度的に上がるはずです。
このあたりが資格の強みですので、あまり不安に思わなくてよいと思います。
またマイホームですが、今はまだ買わないほうがよいと思います。そのひとつの理由は「家族の人数が確定していない」という点です。
2DKにするのか、3LDKやそれ以上の広さの家が必要になるのかを、まだ決められないからです。
こちらも2人目のお子さんが小学校に上がられるころには、ある程度、人数も確定しているでしょうし、世帯収入も増えていると思いますので、より有利な条件でローンが組めると思います。