はじめに
新興航空会社も米IPOを計画
ビンファストに続いて、格安航空会社(LCC)のバンブー航空も米国での上場計画を公表しました。同社は2018年に市場参入した新興航空会社で、コロナ禍の逆風が吹く中、国内最大手のベトナム航空、LCC最大手のベトジェット航空と熾烈なシェア争いを繰り広げています。
同社は事業資金を得るため、7~9月にもニューヨーク証券取引所に上場し、2億米ドルを調達する方針です。
このようにベトナムの新興企業が米国への上場を目論む背景には、国内の証券市場では赤字企業の上場が認められていないことが挙げられます。先行投資の負担が大きい新興企業が、海外市場での資金調達を視野に入れるのも必然的な動きといえるでしょう。
これまでも、ベトナムでは、ビンファストやバンブー航空のような新興企業のみならず、乳製品最大手のビナミルクなど複数の企業が海外市場への上場計画を進めてきました。しかしいずれも実現に至っておらず、障害が多いのも現状です。
例えば、ベトナム企業の知名度は低いため、十分な資金を集められない可能性があります。また、ベトナムの資本市場が自由化されていないことから、海外投資家が為替ヘッジを取りづらいことも障害のひとつです。
さらに、決算書自体が先進国ほど細かいルールで作成されていないため、ベトナム企業が海外で上場を果たすまでには、国内制度の整備も含めて2~3年を要するとの見方が多いようです。
一方で、ビンファストはこれまでのベトナム企業と異なり、資金調達の規模が大きく、米国での事業展開も進めていることから、いま最も海外上場の可能性が高い企業のひとつには違いありません。今後の同社の米国上場の行方が注目されます。
<文:市場情報部 北野ちぐさ>