はじめに
年後半は新型コロナ治療薬の動向に注目か?
ここから3か月は不確実性の高い状況も警戒されますが、例年上昇の可能性が高い秋以降は上昇の期待が持てるかもしれません。昨年秋からの「ワクチン相場」の記憶が新しい方もいるかもしれませんが、今年の後半は「治療薬相場」に期待できるのではないでしょうか。
これまではワクチンによる感染の“予防効果”から相場が急回復・急上昇するフェーズでしたが、ワクチンはあくまで予防です。感染し発症してしまった場合の治療薬の出現は新型コロナの本格的な収束を意味するでしょう。
ワクチンにおいては、日本も開発を進めており、塩野義製薬(4507)が年内納品を目指し国産ワクチンの開発を進めてるものの、海外のファイザー、モデルナ、アストラゼネカなどの製品が主流となっています。しかし治療薬においては、日本の企業も世界と肩を並べる可能性があります。
国内企業では厚労省のコロナ治療薬開発支援補助の対象になっている中外製薬(4519)に注目でしょう。重症者に対する治療薬と重症化前の治療および予防に対する治療薬を開発しており、共に有効性、安全性を検証する第Ⅲ相試験(検証的試験)のフェーズにあります。後者の治療薬に関しては、5月に日本政府の確保に関する合意もしており、薬事承認された場合は国内に速やかに供給される準備も整いつつあります。
そのほかにも、富士フイルム(4901)の子会社が展開し、昨年日本での承認が見送れたものの再度臨床試験を行っているアビガンや、日医工(4541)、帝人(3401)グループの帝人ファーマなども治療薬の開発に着手しています。
治療薬の開発は中止の判断もいくつか出ており、実用化は簡単ではありませんが、もしこれらの治療薬が実用に至れば、日本の製薬セクターを中心に、新型コロナの不安感の払拭の期待から相場全体へのポジティブインパクトとなるのではないでしょうか。
複合的な要因が重なり、先が読めない状態ではありますが、好材料が増えてきているのも事実です。過度な楽観視は禁物ですが、いままでのコロナ動向を警戒しながら過ごす相場は最終局面に来ているかもしれません。
<文・Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>