はじめに
「よし、株式投資をはじめてみよう」と、まず本を手に取る方も少なくないと思います。
しかし、書店に並ぶ投資本を眺めていると、“年1億円を稼ぐ”“資金を15倍にした”など仰々しいタイトルのものが多く目につきます。もちろん出版する側からすると、アピールしなければ売れないのでどうしても大げさにならざるを得ないのでしょうが、その宣伝文句を見ていると「私も投資をするなら、資産を何倍にも増やさなければいけないのでは」というような思いに駆られてしまいます。
株式投資の真の楽しみとは?
しかし、実際に株式投資で「資産が何倍にもなった」という人が、そんなにたくさんいるわけではありません。増やすことができた人のなかにも、たまたま相場がよかったとか、偶然、何倍にもなった株を持っていたというような、非戦略的な方が多くいることでしょう。
本を読んだり、勉強するだけで、資産を何十倍にも増やせるのであれば、株式投資の攻略は簡単です。しかし現実はそうではありません。購入した株がすべて順調に値上がりする、ということは基本的にはないでしょう。通常は、失敗と成功を繰り返しながら、資産を増やしていくものです。
したがって、投資することの真の価値は、自分の資産を「どの株に」「どのタイミングで」振り向けると“満足感”が得られるのかということにあるのではないかと思います。
好きな企業の株を買って、企業の成長と資産の増加がリンクするのは、もちろんうれしいことです。また、配当金をもらったり、株主優待をもらったりすることも楽しみ方のひとつです。
株を頻繁に売り買いすることで資産を増やしたい、長期的に絶対あがる株を見極めたい、という意欲的な人もいらっしゃると思います。しかし、もう少しゆったりと投資を楽しむという目線もご提案したいのです。
長く楽しい“投資ライフ”のために
ゆっくりとした投資を楽しめると、年1億円稼げなくても、資金を15倍にできなくても、長く楽しい投資ライフを送れます。
投資本を読み漁ったり、高いお金をかけてセミナーに通ったりする必要もないと思います。あくまでも“楽しく増やす”というマインドを忘れないでほしいのです。
これはよく言われることですが、はじめて株式投資する方は、まずは身近な企業に目を向けてみるとよいのではないかと思います。
たとえば、毎日、買い物に出かけるスーパーの株を買ってみるとか、大好きな牛丼屋の株を買ってみるとか。そうすると日常生活のなかに「株主目線」でその企業を見る、というプロセスが発生します。
「この新商品は画期的だ」「新店舗がまた増えるということは調子がいいのかな」「最近、お店の掃除が行き届いてないのは採用ができてないのだろうか……」などなど、身近な企業だからこそ、気がつけることもたくさんあります。
株価は毎日見なくていい
また、投資と聞くと、毎日株価を調べ、その上下に一喜一憂というイメージがありますが、長期的に投資を楽しむ投資法では、頻繁に株価を気にする必要はありません。
「株価」ではなく、見るべきなのは「会社」です。もちろん、四半期ごとの決算などにはしっかりと目を通したいところですが、業績が右肩上がりであることを確認できれば、日々の株価の上限に振り回されることはないのです。
株式投資をするとなると、四六時中株価の動きを追いかけて、世界のニュースにもすべて目を通して、というような印象を持つ人もいるかもしれませんが、普通の人がそれをこなすには無理があります。
今の世の中の流れ、そして経済、金融の動向について大きく把握した上であれば、もっと楽しく好きに投資する人が増えるとよいと思います。そして「急がば回れ」というように、それが結果的に、将来の大きな利益につながっていくこともあるのです。
(文:清水洋介)
※本記事は投資一般に関する情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません