はじめに
気候変動は経済政策、再生可能エネルギー調達へ
「気候変動」対策は「経済政策」でもあります。日本の電力消費からのCO2排出量(434gCO2/kWh)は他国に比べて多く、日本は企業の立地として選ばれにくくなっています。
米アップルが2030年までのカーボンゼロ達成を宣言するなど、環境意識の高い企業は、日本企業を含むサプライヤー企業に対して電力消費量全てを再生可能エネルギーで賄うよう要請しています。再エネを調達できなければ、取引を失いかねなくなってきています。
新設発電所による発電コストが最低となる手段とそのコストを見ると、日本では石炭火力発電のコスト(74㌦/MWh)が国内で最も低いにもかかわらず、他国の最低発電コスト(主に再エネ)を大きく上回っています。
新設発電所において再エネが最安の国は世界の3分の2に増加しており、経済的にも再エネを選択する動きが広がってきています。日本も早急にコスト競争力のある再エネ供給体制の樹立が必要となるでしょう。今後、最大の成長分野といえるでしょう。
SDGsからも注目の東京オリンピック
最後に、G7サミットで開催が支持された「東京オリンピック」は、SDGsの観点からも注目のイベントです。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、経済合理性だけでなく、持続可能性にも配慮した調達を行うために「持続可能性に配慮した調達コード」を策定。木材、農産物、畜産物、水産物、紙、パーム油に個別基準が策定されています。
SDGs目標⑫「持続可能な生産消費形態を確保する」に含まれる、企業・公共部門での持続可能な慣行の導入・促進を含め、社会全般における消費・生産パターンの改革というレガシーに繋がるものとして期待されています。
ロンドン五輪では、調達コードに取り入れられた水産物の調達基準(MSC認証)が学校や病院など公共部門に幅広く普及しました。東京五輪でも、今後、認証基準に即した資材の調達が、国や自治体、公共機関へと波及していくでしょう。
<文:チーフESGストラテジスト 山田雪乃>