はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

株式投資を複数の証券会社でやっておりますが、ずっと特定口座を利用しており、確定申告をしておりませんでした。昨年ある株を売却したところ、特定口座年間取引報告書では10万円程度の損が発生しております。ほかの証券会社は源泉徴収で税金を支払っており、確定申告をすれば税金が戻ってくると聞きました。また、今年はご存知の通り株価が急騰していますので、いくつか売却して利益確定させたほうがよいかと考えています。そこで、ご質問です。

(1)そもそも今年の株価動向を考えると、まだ持ち続けるべきなのでしょうか? 正直言ってこのまま株価が上がり続けるとは思えませんが、迷っています。
(2)複数の証券会社の損益通算を行うために確定申告する際、取引のあるすべての証券会社を申告しないといけないのでしょうか? それとも損した分を取り戻せるだけ申告すれば問題ないのでしょうか?
(50代前半 既婚・子供1人 男性)


野瀬: うーん(笑)。この手の質問は最近よく受けるんですよね。株も不動産も上がり続けているので、投資仲間も「もうほとんど売り切った」という人と「まだまだ上がる」という人に分かれています。

日経新聞などを見ると上場企業は「増収増益」という景気のよいニュースばかりなのですが、さすがに2万円を超えてくると「本当に実体経済をともなっているのか?」不安になりますよね。

利益確定させるタイミングは?

私の個人的な現在のポジションとしては、以下のどれかを満たすもの以外は、実は徐々に売却しています。

(1)海外で売上が伸びており、今後も成長が期待できる

(2)配当がよい

(3)会社自体が好き

なぜなら、経済誌などで経済評論家やエコノミストが「年末までに25,000円!」と威勢のよい主張をしているのが少し気持ち悪いからです。

もちろん自民党政権は政権維持のために、株価が下がると、また金融緩和で株価を維持すると思いますが、常識で考えて、そういった金融政策だけに依存する株高は長続きしないと思っています。

あるいは、世の中のほとんどの人は「東京五輪までは……」と考えていると思いますが、私はそれまでに一度リセッションが来ると思っていますので、一度様子見のために利益確定をしています。

利益確定に必要なのは“思い切り”

余談ですが、私の同業者には「株式投資セミナー」を開催している人が複数いたり、銀行や証券会社勤務の知人も同じようなセミナーを会社で開催したりしているのですが、どのセミナーも大盛況で満員御礼、キャンセル待ちだそうです。

この状況は「普段は投資を考えたこともない層が投資を始めだしている」とも捉えられるので、私としては市場が過熱していると考えて一度消極的なポジションをとることにした次第です。

「私が株を売った翌日は、その銘柄が爆上がりする」という悲しいジンクスがあるのですが(笑)、利益が確定できている以上、不満はありますが後悔はありません。

株式投資は“最安値で買って最高値で売る”ことは絶対に不可能なので、このあたりは「エイヤ!」の思いきりが必要ですね。

ただ不動産も高騰している昨今、次の投資先もなかなかないのもまた事実なので「全部を売る」という方針はいささかやりすぎかなと思います。(1)~(3)の条件を参考に、利益確定をするとよいと思います。ただ、あくまで投資は自己責任で(笑)、お願いいたします。

損をしたときほど確定申告は必須!

株式投資の確定申告は意外に忘れている方が多いです。

私の母も株式投資では損をしてばかりなのに、今まで一度もその損を繰越や損益通算したことがない……という話をつい最近聞いたばかり。

損をした年に確定申告をすれば、損益通算で利益分の税金を低く抑えることができるのです。株式投資の確定申告は「損をしたときほど得をする制度」とよく言われていますので、損をしたときほどしっかり行いたいですね。

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