はじめに

アナログだった不動産業界でDX


出典:デジタルトランスフォーメーション(DX銘柄)2021

SREホールディングスは、ソニーの新規事業創出の取り組みの第1弾として2014年4月に設立した企業です。一般消費者向けに不動産仲介サービスを展開する一方、ITプラットフォームにも参入し、AI技術を活用した事業を展開。18年からは、自社のAI技術を他業界の事業者に提供する100%子会社の「SRE AI Partners」を設立し、AIソリューションを本格展開してきました。

SREホールディングスの事業そのものがDXと言えるのですが、DX銘柄2021でとりわけ評価されたのが、クラウドサービスを使った自社不動産の仲介事業の効率化です。

同社は、売手と買手それぞれに専任の担当者をおく片手仲介を展開しつつ、2015年から売手の集客と売手の仲介業務、買手集客、契約業務の4つのフェーズで自社不動産事業の効率化を行いました。

査定書作成の時間が従前の18分の1に削減

先駆的だったのが、売手の仲介業務のフェーズです。ソニーのAI技術を活用した不動産価格推定エンジンを開発し、マンションや戸建、土地といった多様な不動産の成約想定価格を提供。180分程度かかる査定書の作成の時間を10分に削減するなどの成果をあげました。


不動産価格推定エンジンが提供する物件の成約価/SREホールディングス提供

また、買手集客では、AIが顧客の希望にかなった物件情報や査定情報を作成し、自動で追客メールを送信するAIマーケティングオートメーション(MA)を開発。追客メールの作成時間を年間600時間削減した上に、過去反響の掘り起こしにつなげました。

不動産の売買交渉の山場となる契約業務では、重要事項説明書や売買契約書の作成を半自動化するクラウドサービスを開発し、作業効率が飛躍的に向上したと言います。


追客メールを送信するMAの管理画面/同社提供

異業種企業にAIソリューションを提供

同社のDXの強みはこうした社内向けの取り組みだけではありません。SRE AI Partnersと共同でSaaSプロダクトを他社に提供している点も、同社のDX施策の真骨頂といえます。

このAI SaaSプロダクトの提供は、自社不動産事業の効率化で培ったノウハウやデータを、モジュール製品のように特定業界に応用し、AIクラウドサービスやコンサルティングサービスとして業界各社に提供する仕組みです。

現在、エネルギーや不動産などの各業界の企業2〜3社とパートナー契約を締結し、パートナーが保有するデータやナレッジと、SREホールディングスのAI技術を組み合わせたサービスを開発・展開を進めています。また、今後はAI技術を共有する提携先をESG(環境・社会・ガバナンス)など幅広い分野に広げていくとしています。


AI SaaSプロダクト提供の概念図/同社HP

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