はじめに

オリンピックと首相交代と株高と

実は、オリンピックと首相にはジンクスがあります。過去、日本でオリンピックが開催された全ての年で、首相が交代しているのです。菅首相が総裁選不出馬を決めたことにより、今回のオリンピックイヤーでも再現されたかたちです。

前回の東京オリンピックが開催された1964年は高度経済成長期の最中にあり、所得倍増計画を掲げ、新幹線や高速道路などの整備を加速させてきた池田勇人首相が東京五輪の閉会日翌日の1964年10月25日に病気療養のため退陣を表明しました。

池田首相の後を継いだ佐藤栄作首相は、1972年5月に沖縄返還を実現し、札幌オリンピックから4カ月後の6月に退陣を表明。翌7月に、7年8か月にわたる長期政権に幕を降ろしました。

1998年冬季長野オリンピックの年においては、前年の消費税率5%への引き上げが景気後退を招き、7月の参院選で大敗を喫した橋本龍太郎首相が辞任に追い込まれました。また、実現せず幻の東京オリンピックと呼ばれた1940年も米内光政首相が辞任しています。

これだけ重なることに驚きますが、こと株価については過去3回の交代劇からその後はいずれも株高の結果となりました。上図でも示した通り、各々の首相就任1年後、また在職期間はいずれも株価は上昇しており、今回も株高のアノマリーが再現されることへの期待が高まります。

日本株の上昇余地はまだまだある

新首相誕生へ向けて、新たな経済対策と自民党の求心力や支持率回復への期待が高まりつつあります。いずれの立候補者が新首相になったとしても、当面はコロナ対策が徹底され、積極的な財政支援を伴う景気対策と金融緩和の継続に変化はないと思われます。

また、衆議院選挙を控え大型経済対策が発動される可能性も高いでしょう。衆院選で与党が大きく議席数を減らすリスクが後退することにより、海外投資家の投資資金を呼び戻す動きが強まると見込まれます。

新体制による大胆な経済対策と、改革への期待がコロナ禍で覆っている閉塞感を打ち破る展開になれば、株式相場のセンチメント改善が一段と進むことが想定されます。日経平均は短期的な急騰に伴い一旦は上昇ピッチが鈍化することも見込まれますが、9月9日現在の予想PERは13倍台と過熱感は乏しく、出遅れ修正に伴う一段高の展開が期待されます。

<文:投資情報部 及川敬司>

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