はじめに

米国・ハリス副大統領が、8月26日に初の東南アジア訪問を終えました。このたびの訪問先は、シンガポールとベトナムの2か国だけでしたが、東南アジアに対する米国の関心の高さがうかがえる外訪でした。

バイデン政権が発足して以来、米国は、ブリンケン国務長官やオースティン国防長官を、日韓、東南アジアに派遣してきましたが、この度のハリス副大統領の訪問は、米高官による一連のアジア歴訪の締めくくりとなりました。米国はバイデン政権に代わってから、トランプ政権の時よりも、東南アジア重視する姿勢を示したといえます。

おりしも、近年は、米中対立の長期化、南沙諸島海域の領有権に絡む中国とフィリピンやベトナムの対立など、アジア新興国をめぐって問題が山積みとなっています。このたびの米国高官による東南アジア歴訪を機に、今後は、東南アジア、米国、中国の間で、外交関係に変化が出てくる可能性があるとみています。

主なアジア新興国のうち、フィリピン、インドネシア、ベトナムについて、国ごとのおかれている現状と注目点について、確認してみたいと思います


フィリピンの現状と先行き見通し

まず、2022年5月に大統領選挙の実施が予定されているフィリピンです。同国の大統領は任期が1期(5年間のみ)と規定されているため、現在のドゥテルテ氏は次期大統領選挙に出馬出来ないこととなっています。そのため、代替案として、同氏の長女であるサラ氏が大統領選に、同氏は副大統領選に出馬する、という意向を表明しています。

8月に実施された世論調査では、大統領選の支持率はサラ氏が、副大統領選の支持率は、ドゥテルテ氏が、それぞれトップとなっており、実現は濃厚とみてよいでしょう。もし、下馬評通りの結果になるとすれば、ドゥテルテ氏が「院政」を通じて影響力を維持する可能性が高まります。選挙の結果、選挙後の政治体制の変化が注目されます。

8月10日にはフィリピン統計局が、2021年4~6月期GDP成長率を発表しました。前年同期比では11.8%増と高成長で、かつ、6四半期ぶりのプラス成長となりました。前年比ベースでは高成長を記録したものの、前期比では3.9%減でした。

直近は、フィリピン国内で新型コロナ感染者が再拡大しており、先行き不安が強まっています。この度の高成長は手放しで評価できるほどの高成長ではなく、まだまだ不透明感が残っているとみてよいでしょう。

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