はじめに
トレーサビリティの改善で利益率アップ
トレーサビリティの導入は企業の利払前・税引前(EBIT)利益率の改善に繋がる傾向がみられています(2017~2019年)。プラネット・トラッカーが水産加工業者の財務分析をしたところ、水産加工業の平均的なEBIT利益マージンは3.4%程度ですが、GDSTに準拠したトレーサビリティを導入した加工業者は6.8%と倍増しました。製品の自主回収や廃棄、それに伴う法的費用の減少等が要因です。
多数の企業が乱立する水産業界はM&Aを好む傾向にあり、過去10年間で400あまりのM&Aがありましたが、トレーサビリティの導入はM&Aを上回るマージン改善をもたらしています。
シーフード・スチュワードシップ・インデックスとは
世界の大手水産会社のSDGs達成度を評価する指標に、WBAが発表する「シーフード・スチュワードシップ・インデックス(SSI)」があります。これを見ると、日本の主要関連6社は世界に大きく立ち遅れています。
今後、日本企業はトレーサビリティの改善により一層取り組むことで、漁業の持続可能性に貢献しながらSSIが改善し、結果としてEBITマージンも改善すると期待できるでしょう。
<チーフESGストラテジスト:山田 雪乃>