はじめに
日常生活や生き方を通して、お金の価値観を考えるきっかけになるような話題の本をMONEY PLUS編集部がピックアップ。書籍の担当編集者に読みどころやこだわり、制作秘話などを語っていただきます。
今回は、クリコ著の『希望のごはん 夫の闘病を支えたおいしい介護食ストーリー』をご紹介します。
『希望のごはん 夫の闘病を支えたおいしい介護食ストーリー』クリコ 著
おいしいものを食べるのが大好きだった夫が口腔底ガンを患ったことにより、手術によって噛む力を失い、固形物が食べられなくなり、あごと舌だけで食事をする生活に。妻は最愛の夫のために、見た目にも食欲をそそって、食べてもおいしい介護食を生み出すべく奮起。泣けて、笑えて、生きる力が湧いてくる――。感動のノンフィクション介護食ストーリー。
四六判/並製/256ページ/日経BP社/2017年7月17日
担当編集者のコメント
愛する家族が大病を患い、介護が必要になった。どうしても必要なのはもちろん「お金」。そして、この本でご紹介するのは、お金だけでは手に入れにくい「希望」です。
著者、クリコさんの夫アキオさんが口腔底がんを患い、手術によって噛む力を失ったところから物語は始まります。
食事は流動食になるのですが、味、なにより見た目の寂しさに、夫ラブのクリコさんは「食欲を取り戻して、体力を付けなければいけないのに、これじゃ」と絶望します。
アキオさんには、1日も早く、天職とまで感じている職場に復帰したい夢がある。それを叶えるために、「私が、栄養たっぷりで見た目にもおいしそうな流動食=介護ごはんを作る!」と、クリコさんは拳を握りしめるのでした。
とはいえ「おいしい流動食」というクリコさんの願いに応える既存の食材やレシピは皆無で、彼女はアキオさんの介護の傍ら、一人ハンドミキサーを片手に台所で、ああでもない、こうでもないと孤軍奮闘。「どうしたらいいの」と、心が折れる寸前まで追い詰められました。
しかし! あるメニューをきっかけに、一気にアイデアが開花し、すばらしい介護ごはんが続々と生まれ出すのです。どんなにおいしそうなのかは、写真を見ていただければ一目瞭然(実はこの本、レシピの部分には特に贅沢な紙を使っております)。
介護は、いえ、人生は、お金がなければ続けるのは難しい。そして、人生を続けていくには、生きる希望が必要だ。生きる希望は、「おいしい!」と感じられるものを食べること、「明日も、おいしいものが食べられる」と期待できることが生み出す。
編集しながら感じたそんな実感が、そのまま本のタイトルになりました。クリコさんのアキオさんへの、あふれんばかりの愛情の濃さに、ちょっとお腹いっぱいになるかもしれませんが、物語のラストは、担当編集者の自分さえ、何度読んでもぽろっと泣いてしまいます。
クリコさんとアキオさんの二人の物語が、どんな結末を迎えるのかは、ぜひ、本書でお読みください。
(日経BP社 担当編集:日経ビジネス編集部 山中浩之)