はじめに

12月に売れるモノ、と言えばどんな商品をイメージしますか?

例えばビール、忘年会やお歳暮の品として例年12月に需要が高まります。昨年に関して言えばコロナ禍からは年末からお正月に向けた“宅呑み”の需要もありました。

以前、この連載で「株の定説「ビールが売れると株価が上がる」を検証してみた」でも取り上げましたが“季節もの”がどれだけ注目を集めるかはその時の景気に大きく左右されますし、株価の行方にも大きな影響を与えます。ビールの季節にビールが売れるのは、消費者の懐(ふところ)が潤っているからで、景気も良く株価も高くなる傾向があるのです。

12月によく売れるものは他にもあります。12月といえばクリスマス“ケーキ”です。総務省統計局の家計調査から1世帯当たりのケーキ代の月別支出金額(の平均)をみると、昨年までの過去10年間で最もケーキへの支出が多い月は12月の1,365円で、第2位である3月629円の倍以上となっています。

クリスマスケーキの予約は10月頃から本格的にスタートしますが、受け取り時に代金支払いとなるお店も多いことから、12月のケーキ支出金額が突出しています。

そして、クリスマスが過ぎて年末年始を迎える気分が高まってくると、本格的に売れ始めるのが“お餅”です。コロナ禍の昨年は外出自粛のなかで、年末の混雑が避けられるのではとの見込みから、お餅売り場を早めに設定するお店もありました。

しかし、昨年の家計調査を見ても12月のお餅の支出は1,002円と、第2位の11月134円の7.5倍程度と比べても突出しています。過去10年間で平均すると、12月が第2位11月の8倍程度です。

年末と言えば何かと物入りな時期です。そんな時節柄でも、ケーキやお餅の売れ行きが良いというのは、人々の懐(ふところ)に余裕があり景気が良い時ではないかとも考えられますが、どうなのでしょうか。

今回はケーキとお餅、2商品と株価の関係を検証してみました。


ケーキがお餅より売れると年明け株価は好調?

今回は株価の先行きを予想するために、少しデータに工夫をしてみました。
家計調査のデータから、2006年以降で毎年12月のケーキとお餅への家計の支出を取り出します。そして、ケーキ支出をお餅支出で割って、「ケーキ÷お餅」を計算します。ケーキの売れ行きがお餅よりも多いとグラフは上昇し、反対にお餅の売れ行きが多いと下落します。

これに対して、関係を見るための株価は、日経平均株価を使って、翌年の1月から3月の年度末までの騰落をグラフ化しました。つまり将来の株価との関係を見るものになります。結果がこちらです。

2つのグラフは概ね連動しています。12月のケーキの売れ行きがお餅に比べて良くなると、翌年の3月までの株価が上昇する傾向があることを表します。

なぜ、そのような傾向になるのでしょうか。

これはお餅と比べてケーキの方が“嗜好品”としての性格が強いものだからです。景気が良くて12月のボーナスが多かったりすれば、クリスマスケーキもいつもより奮発しようと思う方もいるでしょう。

一方のお餅ですが、保存も利いて調理も簡単です。所得が良くない状況でも、主食にもなるお餅は買われやすい商品になるでしょう。ですから、景気の良し悪しと高い連動は見られないようです。

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