はじめに

 

来年の中国経済政策は期待薄だが、中国景気の底打ちが近づく

筆者は、来年の中国財政・金融政策は景気浮揚とは言えない控えめな内容であったものの、不動産および環境政策の緩和調整により景気への下押し圧力が弱まる可能性があると評価しています。

来年の中国経済政策方針における最大の注目点は、不動産政策や二酸化炭素の排出を抑えるための環境関連規制の更なる引き締め強化の可能性が低い、ということになると考えています。これまで、2021年央にかけて強化されてきた不動産投資の抑制政策や二酸化炭素の排出規制は、投資・生産を鈍化させ、景気への強い下押し圧力となっていました。

特に不動産投資の鈍化は中国景気には大きな悪影響を及ぼしており、例えば11月の中国の70都市の新築住宅価格の上昇率は前月比で▲0.3%と2カ月連続で下落、住宅の新規着工面積も年初来で前年比▲8.4%と大きく減少するなど調整色を強めています。不動産関連の産業はGDPの約14%を占めることから、同産業の活動の鈍化は景気に大きな影を落としていました。また、環境規制も鉄鋼や化学製品など電力消費の多い産業の生産を抑制してきました。

筆者は、工作会議の声明をみるに、こうした政策および規制が、これ以上強化されず、やや緩和方向へ微調整される可能性が高いと考えています。また、政策姿勢の微調整により、中国経済への下押し圧力が近い内にも弱まり、景気が底を打つ可能性があるとも考えています。

不動産規制は、過度なデベロッパー向け融資の厳格化や住宅ローン承認の長期化を是正するよう当局が指導を始め、一部報道によれば不動産向けの融資や住宅ローンが徐々に出始めているとされます。また、環境規制については、産業向けの電力需要を満たすようエネルギー供給を安定化させる方針が示されています。

当局は景気の底割れ回避にのみ注力か

もっとも、中国景気にはいくつかの懸念要素が残ります。外部環境を見渡すと、主要先進国での財需要の伸び鈍化から今年の中国経済を下支えした輸出が鈍化する可能性があります。また、国内では、2~3月の北京五輪・パラおよび年後半に予定される党大会など重要イベントを控え、感染拡大を防ぐべく厳格なゼロコロナ方針が継続され、消費の回復が遅れる可能性も指摘できます。

これまで述べてきたように、当局が示した来年の経済対策は現状必要最低限の調整に留まっています。不動産投資を抑制しつつ景気の底割れを防ぐという難題に加え、景気を支えていた輸出の鈍化など新たな懸念要素もあり、来年の当局の経済運営は難局が想定されます。

こうした環境下、更なる政策の緩和を期待する声も大きいと思われますが、習近平主席が成長を犠牲にしてでも質の高い成長を目指す方針を掲げる中、筆者は当局が持てる政策ツールを小出しにしていくと考えています。

従って、当局が大規模な金融緩和や消費刺激といった政策を実施することは期待しにくいものの、中国景気の急速な悪化が回避され、景気の底打ちが確認できるかどうかが来年の中国経済の注目点になるのではないでしょうか。

<文:エコノミスト 須賀田進成>

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