はじめに
経済活動正常化の恩恵を受けるのは誰?
今年は経済活動正常化が本格的に根付く年になるでしょう。新型コロナウイルスのオミクロン型が懸念材料であるものの、重症化する割合は低いとのデータが多く出ているほか、ワクチンに続いて経口治療薬が開発・認可されていることを考えると、昨年と比べて経済活動が戻る余地はまだ十分にあると言えます。
しかし、経済活動の正常化は株価の裏付けとなる上場企業の利益を増やす要因には必ずしもなりません。行動制限で大きな打撃を受ける業種は飲食や旅行、娯楽・スポーツ施設をはじめとした対面サービス業、航空・鉄道などの輸送業ですが、その他の製造業や鉱業、電力・ガスなどの公益、金融業などはほとんど悪影響を受けません。医薬品、インターネットやハイテク関連などはむしろ行動制限などの恩恵を受ける業種でしょう。行動制限による悪影響を受けるセクターは日米ともに1割ほどです。最も大きな悪影響を受ける飲食や旅行は小規模企業や個人事業がほとんどでそもそも株式市場に上場していません。
飲食や旅行への需要が高まることは、資金の流れる先が上場企業から非上場企業へと変わることを意味します。多くの人が飲み会や旅行をし、実店舗でのショッピングが忙しくなり、ネット広告やサブスクリプション型の動画サービスを見る時間が減ってしまえば、上場企業の利益は伸びにくくなります。
世界的に株価の上昇は鈍化へ
また、景気が回復すれば、株主以外のコントラクターへの支払いも増加します。経済活動正常化に伴うサプライチェーンのひっ迫に伴い、原材料コストは上昇を続けています(取引先への支払い)。失業率の低下によって賃金も上昇しており、雇用コストも上がります(労働者への支払い)。
短期金利市場は米連邦準備制度理事会(FRB)による今年3回の利上げを織り込むなど、中央銀行による金融引き締めも本格化すると見られ、金利コストも上昇します(債権者への支払い)。コロナ対策で積み上がった財政赤字の穴埋めのために法人税や金融所得課税、高所得者へのキャピタルゲイン増税も各国で議論されており、税務コストも上がる見込みです(政府への支払い)。
以上のことを考えると、景気の回復に伴って企業の売上は増加が見込まれるものの、株価の裏付けとなる株主の利益は想定以上に増えにくい環境にあると言えそうです。株式市場は世界的に上昇が続くと見ているものの、その伸びは昨年から大きく鈍化するでしょう。