はじめに
近年増加している「孤独死」。それに関連して「孤立を防ぐ支援方法」や遺品整理など、さまざまな議論や問題点が論じられており、そのひとつに「相続問題」があります。
「過程はどうあれ、独身になったら相続は関係ないだろう」と思う人もいるかもしれませんが、生涯未婚のまま亡くなったとしても親族がいれば相続権は発生しますし、「離婚して独身になったけど、前の配偶者との間に子供がいる」といった場合は、さらに複雑なことになります。簡単にみてみましょう。
「相続順位」を知っていますか?
基本的な相続の優先順位は以下のようになります。
1.子供(死亡している場合は孫)
2.父母(死亡している場合は祖父母)
3.兄弟姉妹(死亡している場合は甥姪)
※戸籍上の配偶者は、必ず相続人になる
※子供は嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子)・非嫡出子を問わない
※先順位の人がいる場合、それ以降の人は相続人になれない
たとえば、(嫡出・非嫡出を問わず)子供を授かる機会がないまま亡くなった人の財産は、「親→祖父母→兄弟姉妹→甥姪」の順に判定が行われます。仮にこれらに該当する人がいない(もしくは、相続人全員が相続放棄を行った)場合、遺産は国庫行きとなります。
少し事情が異なるのが「過去に結婚・離婚の経験があり、そのとき子供を授かった人」の場合です。まず、配偶者ですが、上記の通り婚姻届を提出して戸籍上の配偶者となった人は必ず相続人となります(事実婚の場合は相続権は発生しない)。そのため、離婚届を提出して戸籍から抜けると元配偶者の相続権は消滅します。
しかし、子供(亡くなっている場合は孫)の相続権は、親権の有無にかかわらず消滅しません。
「2017~2018 トクする相続&かしこい贈与」p.10より (日本実業出版社)
たとえば、上図において親権は母親が取得、その後元夫である父親が新たに子供を授かることもなく亡くなったとします。 遺産の分配法について指定した遺言書・公正証書などがなければ、基本的に子供がすべて相続することになります。
トラブルになりやすい「子連れ再婚」
一方、子連れ再婚で一緒になった子供と新しい親との間には相続関係は発生しません。
「2017~2018 トクする相続&かしこい贈与」p.11より (日本実業出版社)
なお、こうした子連れ再婚はよくトラブルの元となっています。
自分が再婚であることを子供に告げないまま亡くなる親も多いですが、相続手続きを行うために遺族が戸籍謄本を取り寄せたら「実は前婚で子供がいた」ことが発覚し、顔も知らない兄弟姉妹と相続トラブルが起きることも少なくありません。
こうしたトラブルを避けるためにも、離婚・再婚を経験している親は遺言書を作っておくべきだといえるでしょう。
さて、こうした離婚後の相続に関する注意点は他にもあります。ひとつは相続放棄について、もうひとつが元妻・元夫ともに存命で、子供が先に亡くなったケースです。それぞれ見てみましょう。