はじめに

2020年以降、コロナショックやウクライナ侵攻と、わずか2年ほどの間に大きなできごとが起こりました。それによる影響で、株安や円安、物価高騰が続くなか、資産をどのように守っていくのかは多くの人が抱える悩みでしょう。

過去にも、世界同時多発テロやりそなショック、リーマンショック、東日本大震災など、金融市場が混乱に陥ったタイミングはあります。では、そのとき富裕層はどのように資産を守ってきたのか。積立投資がメインの投資家にも真似できる部分はあるのでしょうか?


富裕層とマス層にみる資産の特徴

野村総合研究所(NRI)が2020年10月~11月に、全国の企業のオーナー経営者(主要株主かつ代表者)を対象に実施した「NRI富裕層アンケート調査」によれば、純金融資産保有額(※)が1億円以上5億円未満の富裕層は、124万世帯で236兆円もの資産を保有しています。一方、純金融資産保有額が3,000万円未満のマス層は4215.7万世帯で、656兆円を保有しています。

(※)預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いたもの。

両者の純金融資産保有額を、リーマンショック後の2009年と、コロナショック前の2019年とで比べてみると、大きな差が広がっています。

<富裕層>(2009年)150兆円 →(2019年)236兆円 +57.3%
<マス層>(2009年)480兆円 →(2019年)656兆円 +36.6%

富裕層はマス層に比べるとリスクをとっているため、金融危機になると一時的に時価で資産を目減りさせることもありますが、その後の回復局面ではより大きく資産を増やしており、この勝ちパターンは繰り返される傾向にあります。

富裕層といっても、様々な経済的背景や投資スタイルを持っており、一概にいえない部分もありますので、筆者の主観的な見方を中心に富裕層の投資行動を解説します。

キャッシュイズキングと日常的な情報収集

富裕層はそもそも生活に困らないお金をすでに保有していますので、気にすべきはリスクのコントロールになります。リスクの取りすぎはもちろん、リスクのとらなすぎにも留意しながら、自分にあったリスクで資産運用します。

大きな下落局面にリスク資産(株式や株式投信、不動産、外国債券など)を購入できるように、安全資産(現金・債券など)とリスク資産のバランスをとりながら、同時に積立投資を継続している場合もあります。

大きな株価下落局面であっても、株価が割安になったから将来的な値上がりを期待して大金を投入するというよりも、保有するリスク資産が安全資産に対して大きく目減りすると、その再調整のためにリバランスをします。常にキャッシュなどの安全資産にも分散投資していないと、リバランスによってリスク資産を買えないからです。

また、各種メディアからの情報収集を日課としていますし、わからないことは専門家などに聞く習慣をもっていますので、情報収集力や分析力もあります。たびたびやってくる株価の暴騰・暴落局面をよく分析されています。

迅速な行動と打診売買

富裕層は一般的には、ビジネスや何かで成功されたかたも多く、目の前に転がり込んできたチャンスを活かすことに長けています。大きな調整局面の前になんらかの売りサインを逃さないかたや実際に株価が下がり出してからの「なんかヤバい!」という雰囲気を感じる、嗅覚の鋭いかたもいらっしゃいます。

とはいえ、回復まで時間のかかったリーマンショックや、あまりに短期調整で終わったコロナショックとの違いは、事前にはなかなか判断しにくく、チャンスとはわかっていてもそれがどの程度のチャンスなのかは、後になってみないとわかりません。このような場合は、様子見のための売り/買い注文「打診売り」「打診買い」という方法もあります。

自分の投資行動におけるルール通りに動くことを重視しているため、どうなるかわからない、自信がない場合でも、投資金額を抑えることでお試しで売買することもあります。その後、本格的なトレンドがでてくれば、また追加で投資するケースもあります。

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