はじめに

「実家じまい」に向けて、今すぐにやっておきたいこと

生前に売却するにせよ、相続するにせよ、不動産の情報をきちんと調べることが重要になります。面倒でも法務局で不動産登記事項証明書や地図を取得し、地番なども確認しておきましょう。不動産の名義が誰になっているか、境界はどこなのか、登記はきちんとされているか、領収書があるかなどを確認しておきましょう。所有物件には、土地の一部が他人と共有の場合や、敷地内に未登記の建物があるケースも存在します。自治体のなかには共有の場合、代表者にしか納税通知書がいかない場合もあります。

特に売却する場合には、価格についても知っておくとよいでしょう。取引の物件価格を知るには、国土交通省の「土地総合情報システム」で検索することができます。売却後の確定申告には、購入時の価格がわかる書類があれば税金の計算上、有利になります。購入費用は、取得価格として売却価格から差し引くことができるからです。

専門的な内容でよくわからないことや不安な点があれば、司法書士や土地家屋調査士に相談しておくとよいでしょう。

家族が集まった機会に取り決めておきたいこと

「実家じまい」に早く取り掛かるほうが有効だと理解していても、親の気持ちを考えると、いきなり実家の処分の話を進めることはできません。まず実家についての親の考え方や意向に耳を傾けるところから始めます。子や孫に引きついでもらいたいものや大切にしているものを知る必要があります。場合によっては、所有者の亡くなった後、相続が開始してからの処分になることも覚悟しなければなりません。その上で、実家を売却するのか、維持するのかを決めます。

親の生前中に実家を売却することが決まれば、新しく住む場所や環境についても考えなければなりません。住まいの種類については、マンションなのか、同居なのか、介護付き高齢者住宅なのか老人ホームかなどを検討します。環境については、子どもの住む場所との距離、医療機関へのアクセス、医療・介護サービスが充実しているかなども考慮しておきましょう。

その次の段階では、売却の方法や順序、業者選定、期間についての話し合いが必要になります。不動産は買い手が見つかるまでに、思った以上の時間がかかることもありますので、長期戦の構えが必要です。また「隣の土地は高くても買え」とよくいわれます。近隣の方が購入するケースがあるため、まずはお隣の方に売却する旨の声かけは必須です。

売却には5~6年かかるケースも

知人の不動産業者の話ですが、この数年間に「実家じまい」をする方から、土地を売却する依頼がありました。高齢になった親を東京に呼び寄せるケースでした。何度も息子さんが東京から福岡まで出向き、契約が決まりかけては消え、親自身も売却をあきらめることもあったそうです。実家の売却までには、5~6年の歳月を要したそうです。不動産は固有性が強いので、契約が決まるまでの期間を考慮すると、早めの対応を心掛ける必要があります。

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