はじめに

両者の関係性と会社員の節税効果

ここで、改めて事業所得と雑所得で計算した場合、どんな違いが出るのかを見てみましょう。

例えば、会社員の方で1月から12月の1年間での給与収入が600万円の場合、給与所得控除額は「収入金額 × 20% + 440,000円」で計算されます。つまり、「6,000,000円 × 20% + 440,000円 = 1,640,000円」となり、年収から給与所得控除額を引くと、「6,000,000円 - 1,640,000円 = 4,360,000円」です。これが年収600万円の方の給与所得です。

同じく年収700万円の場合は、給与所得控除額は「収入金額 × 10% + 1,100,000円」となるので、「7,000,000円 × 10% + 1,100,000円 = 1,800,000円」となり、「7,000,000円 - 1,800,000 = 5,200,000円」が給与所得となります。
※給与所得控除額について、詳しく知りたい方は国税庁ウェブページを参照ください。

ここで、会社員が事業所得である副業で30万円の赤字が出た場合を見てみましょう。年収600万円の場合、下記の控除が追加されます。

基礎控除 48万円
社会保険料控除 90万円
【合計】138万円

課税される所得金額は「4,360,000円 - 1,380,000円 = 2,980,000円」となり、この金額を税率表に照らし合わせると所得税率が10%になるので、住民税の10%と合わせ20%の節税効果があります。

つまり、副業で30万円のマイナスが出た場合、そのマイナス分に所得税10%と住民税10%で3万円ずつ節税されて合計6万円ほど安くなるということになります。

一方、年収700万円の場合は、下記の控除が追加されます。

基礎控除 48万円
社会保険料控除 100万円
【合計】148万円

課税される所得金額は「5,200,000円 - 1,480,000円 = 3,720,000円」となり、この金額を税率表に照らし合わせると所得税率が20%になるので、住民税の10%と合わせ30%の節税効果があります。

つまり、副業で30万円のマイナスが出た場合、そのマイナス分に所得税20%の6万円と住民税10%の3万円が節税され、合計9万円ほど安くなるということになります。

所得税は「超過累進税率」といって、たくさん稼いでいる人の方が税率が高くなるので、高所得な方ほど節税効果が大きいということになります。
※税率について、詳しく知りたい方は国税庁ウェブページを参照ください。

一方、雑所得の場合は、いくらマイナスが多く出たとしても、そのマイナス分は0円として計算されますので、税額は全く変わりません。事業所得と雑所得、副業がどちらの所得になった方が税金がお得か、一目瞭然ですよね。

もし実現したら……

さぁ、この知識を踏まえて、「事業所得は300万円超から」という話題に戻りましょう。

パブリック・コメントの内容は、「給与の収入がメインだという人に関しては、年収つまり1月から12月の1年間で入ってくる金額が合計300万円を超えなければ、『事業所得』とは言えなくて『雑所得』として計算する、と変更しようと思うけど、どう?」という内容です。

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もしこれが実現すると、年の収入300万円も稼ごうと思うと、毎月25万円以上を稼ぎ続けなければ「事業所得」とは言えないことになります。これ、事業を専業でやっている人にとっても結構大変な金額です。ほとんどの副業は、「事業」とはいえず「雑所得」ということになるのではないでしょうか。

不当に節税しているケースを制御できるのは良いかもしれませんが、いま会社で働きつつ、少しずつ資金を貯めながら開業して、今後は退職して本当に事業として一本でやっていきたいと奮闘している方にとっては、「なんて……嘆かわしい!」ですよね。

副業や開業を考えている方は、今後の動きに注目してください。

※編注:初出時、タイトルに誤りがありました。

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