はじめに

誰もが向き合う可能性のある介護の問題。両親が高齢になってきたにも関わらず、介護にどのぐらいお金がかかるか全然知らない……なんてことはありませんか?

そこで、「介護のほんね」を運営されている株式会社プラチナファクトリーの代表取締役・石崎洋輔さんに、「介護のお金」について様々なお話を伺いました。

※2015年取材当時の情報です。


介護施設にはたくさんの種類がある

ーーまず介護が必要になった場合、どのような流れで介護サービスを受けるのですか?

石崎さん: 色々なケースがあると思うのですが、例えば自分やご家族が突発的な怪我や病気によって介護が必要になった場合、最初にやることは、住んでいる地域の役所に行ってもらって、福祉課、高齢社会課などの窓口に介護保険の要介護認定の申請をすることですね。

そのあと指示に従ってお医者さんの診断書など必要な書類を集めつつ、自治体が認定した調査員の訪問調査を受けて、介護が必要かチェックをします。

それで、要介護認定が受けられれば、自己負担1割で介護サービスを受けることができます。それと並行しつつ自分に合った介護サービスを探すという流れが一般的でしょうか。

ーーそうなんですね。介護サービスは自分で探すものなのですか?

要介護認定の申請をする際に、役所の窓口で「居宅介護支援事業所」というリストをもらえます。

その中から自分で連絡をとってケアマネージャを選びます。そのケアマネージャさんと一緒に必要な介護のプランを考えていく感じですね。介護度に応じて訪問介護や訪問看護の頻度、必要な福祉用具、デイサービスや訪問入浴サービスなどの利用プラン (ケアプラン) を決めていきます。

ーーサイトを拝見しましたが、介護施設はこんなにもたくさんの種類があるんですね

そうですね。厚労省の分類だと制度上かなり種類があるんです。ただ、複数の区分にまたがっているものもあったりします。

■介護施設の種類
・介護付有料老人ホーム
・住宅型有料老人ホーム
・健康型有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
・グループホーム
・ケアハウス
・軽費老人ホーム
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設

“特養”は待機者多数、入居時費用が数千万の施設も

ーーそれぞれの違いはあるのですか?

違いは結構あります。いわゆる老人ホームっていうと思い浮かべる方が多いのが、「特別養護老人ホーム」 です。

民間の施設に比べてかなりお安くて、生活費を全部含めてだいたい月額6万円から15万円ですね。ただ、待機者が多いので、なかなか入居できない状況だったりします。

よくニュースで待機老人52万人という話が出るのは、この“特養”のことなんです。

ーーそうなんですね。他の施設はどのようなものなのですか?

例えば 「介護老人保健施設」 は、どちらかというと病院から自宅に戻る機能訓練のための介護施設で、「ここでリハビリをして家に戻りましょうね」という施設です。

月額利用料は、特養よりもちょっと高い8万円から17万円くらいでしょうか。原則として入居は3カ月までで、長期入居は出来ないことになっています。

ーーなるほど。では、有料老人ホームというのは何ですか?

「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」 というのがあるのですが、サービスを受ける側からすると2つの違いはそれほどないですね。

介護付の方は、施設自体が介護保険の認定を受けており、介護施設内で包括的な介護サービスが受けられます。なので、介護サービス費用の利用者の自己負担が介護度によって一定額となっています。

一方、住宅型は、住居の運営と介護サービスの提供が別々というカタチになっています。

介護付のようにパッケージ化された介護サービスではなく、個人のケアプランに従ってサービスを受けるので、介護サービス費用の自己負担額は使った分だけかかります。

あと、特養との違いとしては、民間ということもあり、入居時費用がかかるケースが多いんです。最近では、0円のところも増えてはきていますが、昔は数千万円のところ結構もありました。

ーーそんなに高いところもあるんですか。

よく雑誌などでも紹介されているとある施設は、入居時費用が一番安いプランで8750万円、高いものだと3億7000万円くらいします。月額費用も20万円以上です。その分、施設内には豪華なレストランがあったりします。

ーー入居時費用というのはそもそも何ですか?

入居時費用は「前払賃料」とも表現できるのですが、入居後の居住費を入居時にまとめて支払うというものです。「終身利用権を買う」ということで、自分の資産になるものではないんですね。

入居時費用には償却期間が定められており、償却期間が終わる前に退去された際には未償却部分が返還されるようになっています。

例えば入居時費用が1,000万円で5年償却の施設で3年住んでお亡くなりになった場合、残り2年分は戻ってきます。入居する時に、施設の前払賃料の償却期間がどれくらいなのかをチェックするのはすごく大事ですね。

法改正によって生まれた「高齢者向け住宅」

ーーなるほど。それから「サービス付き高齢者向け住宅」というのは?

「サービス付き高齢者向け住宅」 は、位置づけとしては介護施設というよりは高齢者が安心して生活できる住宅という感じです。

国土交通省と厚生労働省が共同で所管する「高齢者住まい法」が2011年に法改正されて制度ができました。こちらは住宅なので、イメージとしてはマンションの賃貸と変わりません。

そのため入居時費用はほとんど無く、その代わりに敷金が必要となるケースが多いです。月額の利用料もピンキリですが、10万円から20万円くらいが多いですね。

生活の自由度が高い反面、介護サービスは外部の業者を利用したり、その施設自体には介護サービスがついてなくて、そこから外にあるデイサービスに通ったりですね。本当に施設によってばらつきがある状態ですね。

ーー「グループホーム」というのはどういったものでしょうか?

一般的に 「グループホーム」 と呼ばれているのは、「認知症高齢者グループホーム」を指します。9〜18人ほどの入居者が数名のスタッフと共同で生活をしていて、正式には「認知症対応型共同生活支援」と言われる小さな施設ですね。

ですので、認知症だけれど、体は元気だという方が結構多いです。例えば胃ろうになってしまい、食べる事が出来ず、胃に直接栄養を与えることになった場合は、そういう処置ができる「有料老人ホーム」や特養に移る必要があります。

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