はじめに

「外貨投資」といわれますが、外貨での運用は投資なのか、それとも投機なのか。議論の分かれるところです。はたしてどちらなのでしょうか。


投資と投機の分かれ目

外貨建て投資信託、外貨建て債券、外国株式など、外貨建て金融商品にはさまざまな種類がありますが、これらは基本的に「投資」といっても良いでしょう。というのも、通貨は外貨建てですが、投資信託や債券、株式などは、いずれもフェアバリューが存在するからです。

投資信託のフェアバリューというと、少し違和感を覚えると思いますが、投資信託は債券や株式などフェアバリューを計算できる有価証券の集合体なので、間接的にはフェアバリューが存在しうると考えても良いでしょう。

ただ、同じ外貨投資でもFX(外国為替証拠金取引)の場合は、いささか事情が異なってきます。なぜならFXの場合、収益の大半が為替相場の値動きに左右されるからです。そして為替レートにはフェアバリューが存在しません。ここが、「投資」と「投機」の分かれ目になると考えられます。

フェアバリューが存在するかどうか

フェアバリューの意味を調べると、「公正価格」、「適正価格」という言葉が出てきます。

株式の場合、発行企業の純資産、配当額、収益性、成長性などいくつかの変数を用いた評価基準によって、フェアバリューを算出できます。皆さんにとって身近な事例でいうと、たとえば1株あたり利益に対して、今の株価が割高か、それとも割安かを判断するのにPER(株価収益率)を計算しますし、1株あたり純資産に対して、今の株価が割高か、それとも割安かを判断するのであればPBR(株価純資産倍率)を計算するでしょう。

つまりフェアバリューが存在している投資対象の場合、現在のマーケットで形成されている価格が、フェアバリューに対して割高なのか、それとも割安なのかを判断できます。結果、割高に評価されているものには売りが入ってフェアバリューまで価格が下落しますし、逆に割安に評価されているものには買いが入り、フェアバリューまで価格が上昇します。結果、金融不安などマーケットがショック状態に陥っていない限り、マーケットでの価格形成も比較的穏やかなものになります。

ところが為替レートの場合、株価や債券価格と同様に値動きはあるもの、その価格形成にフェアバリューの概念が存在しません。なぜなら、為替レートは二国間における通貨の交換比率だからです。

もちろん為替レートはさまざまな要因によって変動します。金利差、経常収支、物価水準、地政学リスク、景気など、まさに森羅万象を織り込みながら時々刻々と変動します。

しかし、これらの変動要因を見ても分かりますが、どれも今の為替レートに対するフェアバリューを算出するための根拠になりません。

たとえば地政学リスク。近年はウクライナにおける紛争、米中間の政治的駆け引きなど、地政学上のリスクの高まりによって米ドルが買われたりしますが、地政学リスクを「量」として計算対象にし、そこから為替レートのフェアバリューを算出したりすることはできません。景気などもまさにそうです。

また、教科書的には、「経常収支の黒字が増えると、その国の通貨が買われる」などといわれますが、経常収支の黒字が大きくても、他の要因によってその国の通貨が売られることもあります。株式や債券であれば、その発行体の根源的な価値が定まっていて、その理論値を計算することによってフェアバリューを算出できますが、為替レートは、何をもって根源的な価値になるのかがよく分からないのです。

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