はじめに
会社の上司や先輩から「礼儀がなっていない」と怒られた経験がある人は少なくないでしょう。たしかに「礼儀正しく」はビジネスパーソンにとって基本中の基本です。
しかし「社会に出てからの礼儀」は、学校で教えてもらう機会がなく、「何が礼儀正しいことで、何が失礼にあたるの?」という線引きも難しいもの。行き過ぎた礼儀がかえって「慇懃無礼」になってしまい、相手によくない印象を与えてしまうこともあります。
「『礼儀』って難しい……」
そう思っている人のために、ビジネスコンサルタントとして活躍するかたわら、茶道の裏千家に長く携わってきた山﨑武也さんの著書、『なぜか好かれる人の「ちょうど良い礼儀」』から「礼儀の基本」についてお伝えします。
礼儀の基本は「挨拶」に詰まっている
「礼儀正しく」と聞くと、きれいな「型」や「言葉遣い」ばかりが注目されますが、人に与える印象は、そこに「心」が込められているかいないかで大きく変わります。
そもそも、礼儀作法は「相手を尊重したり敬ったりする心」が所作や言葉に表れたものです。「相手に良い気分になってもらおう」という気持ちでいれば、自然と礼儀も正しくなっていきます。
とくに挨拶は大切です。挨拶は人と会ったときに最初に交わす言葉なので、ぶっきらぼうだと「なんだかとっつきにくい人だな」「不機嫌なのかな?」と思われてしまいます。
挨拶をするときには、和やかさの演出を心がけ、「スマイル」で接するのが一番です。スマイルは、「相手と会うのがうれしい」「良いコミュニケーションをとりたい」という意思表示になるので、「礼儀正しさ」の土台になるのです。そのうえで、相手の目を見てきちんとお辞儀をします。
オーソドックスで礼儀にかなった「本来のお辞儀」は、指を全部伸ばし、手を膝に向かって下げると同時に頭を下げます。最近、お店などの接客業を中心に増えている「胸や腹の前で両手を組んで頭を下げるスタイル」は、正しい礼儀にかなったものではありません。
そして、挨拶に一言つけ加えるとより印象が良くなります。
たとえば「おはようございます」の後に、「お元気ですか?」「調子はいかがですか?」と言えば、相手への関心の深さを示すことができます。
「たかが挨拶」と思うかもしれませんが、ちょっとしたことに礼儀の良し悪しは表れます。このことについて山﨑さんはこう語っています。
大袈裟な言い方になるが、自分の全人格を込めるくらいの気持ちを表現するものにする。同じ「おはようございます」を言うだけでも、相手を敬うと同時に親愛の情を込めて礼儀正しい言い方に徹する。もちろん、瞬時でも立ち止まり相手の目を見たうえで、きちんとお辞儀をする
『なぜか好かれる人の「ちょうど良い礼儀」』p10-11より
挨拶などというのは日常茶飯事のちょっとした一部分である。しかしながら、そこに人生に対する姿勢の一部を垣間見ることができる。
『なぜか好かれる人の「ちょうど良い礼儀」』p13より
型や言葉遣いを正しているのに「礼儀がなっていない」と言われる人は、心のゆるみや手抜きが表面ににじみ出てしまっているのかもしれません。