はじめに
走行距離課税が話題になった背景
冒頭の走行距離課税は、この「自動車関係諸税の課税のあり方の検討(国土交通省)」の議論の中で、10月26日(水)に開催された政府税制調査会の総会で発言があったようです。まだ議事録が公開されていませんが、内容としてはこのままでは自動車関連の税収減少が続き、道路の維持費が確保できないとして、自動車の利用に対して課税することで、税収を確保しようというものです。以前からこれについて着手が必要との意見もあったようですが、議員からSNS拡散があったことなどもあり、今回大きく話題にとりあげられました。
自動車税はこれまで、排気量に応じた課税を行ってきました。このため、排気量の少ないハイブリッド車や電気自動車(EV)が普及することで、現在の税制では自動車関連の税がこの先どんどん減少することが明らかなのです。また、燃費性能の向上などでガソリン税についても減収が続くことが予測され、若い世代の自動車離れも手伝って、道路の維持費を賄うことができない、という危機感があるのです。
このため、車の「保有」に対して課税してきた自動車税の代わりに、「利用」に対して課税してはどうか、という案があがったということです。「利用」つまり、走行距離に応じた課税も検討が必要であるというものです。
しかし、交通網が十分整備されていない地方の負担が大きくなることが明らかな上、運送コストに上乗せされることですべての物流の影響するため、さらなる物価高となる懸念もあり、多方面から反発が大きいのです。
この「走行距離課税」についても、もし本格的な検討が始まると、今回解説したプロセスを経て法律となっていくレールに乗せられることになります。一部の方の負担だけが増えて「なんて……嘆かわしい!」という事態にならないよう、公平性の確保の理念に基づいて十分な議論がされ、より良い制度になることを願います。
税制改正は、私たちの生活に大きく影響するので、今後どう動いていくのか、その動向に注目していきましょう。