はじめに

ウェブの登場が増やした作家デビューへの道

――今も投稿サイトから常に作家や作品を探していると思うのですが、第二の『キミスイ』を出すべくチェックしているポイントはありますか?

なんといっても、やはりタイトルです。書店さんでたくさんの本が並ぶなか、あらすじや帯も見なくとも、タイトルだけで読者に訴えかけることができる作品は強い。

あとは、読んですぐに帯につけたいキャッチが思い浮かぶ作品ですね。
作品の魅力を読者に伝えることができなければ、本は売れません。帯のキャッチが思い浮かぶというのは、その魅力がぱっと思い浮かんで、ワンフレーズで言い表せるということ。
それができれば、あとはその作品が刺さる層の目につく場所に置くことができれば、どんどん“好き”の輪が広がっていくと思います。

――ウェブを使って多くの人が作品や感想を発信できる現代は、“好き”の輪を広げやすいとも言えますね。

ウェブは出版業界にとっても、本当に大きな革命でした。
それまでは作家がデビューするには、公募に応募するか編集部に持ち込むかくらいしかなかった。それだと、作品を読んでくれる人はどんなに多くてもせいぜい10~20人。作家さんの側は読んでもらえるまで連絡を待つしかなかったし、読んだ編集者がその作品の良さを見落としてしまうかもしれない。

でも、ネットの登場によって、作品を投稿すれば100人、1000人に読んでもらえる可能性が出てきた。その中から“この作品を他の人にもすすめたい”という強烈なファンが生まれてきたとしたら、今度は、その作品への読者の熱量が再びネットを介して伝わっていき、ファンが円状にバーッと増えていく……という事例が増えています。

住野さんも、文学賞や新人賞への投稿ではデビューまで行きつけなかったのに、『なろう』へ『キミスイ』を投稿したことで熱心なファンが生まれ、それがどんどん広がっていった。いまは、双葉社以外の出版社でも、非常に人気のある作家として活躍されています。

自分が直接知っている知り合い100人には見向きもされない作品でも、ネットを使って1000人に届ければ、1人はファンが生まれるかもしれない。だったら、1万人に届ければ、ファンは10人に増えるかもしれない。そういう風に広げていけば、届かないと思っていた夢をかなえることだって、不可能ではありません。

出版社も、素晴らしい作品を多くの人に届けるために、努力を重ねていきたいですね。

『君の膵臓をたべたい』住野よる 著

読後、きっとこのタイトルに涙する。ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それは膵臓の病気により余命いくばくもないクラスメイト・山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、珠玉の青春小説!(双葉社)


ⓒ2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 ⓒ住野よる/双葉社   

映画『君の膵臓をたべたい』
<キャスト・スタッフ>
浜辺美波 北村匠海
大友花恋 矢本悠馬 桜田 通 森下大地 / 上地雄輔
北川景子 / 小栗 旬
原作:住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社刊)
監督:月川 翔
脚本:吉田智子
音楽:松谷 卓/追加編曲:伊藤ゴロー
主題歌:Mr.Children「himawari」(TOY'S FACTORY)
(公式サイト)http://kimisui.jp/

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