はじめに

公的年金から支給される遺族年金とは?

私たちが加入している公的年金からも、万が一の際には遺族に遺族年金が支給されます。国民年金からは遺族基礎年金が、厚生年金からは遺族厚生年金が支給されます。しかし、確定拠出年金と異なり、遺族がその年金を受けるには、被保険者の年金加入期間が要件を満たしているのかどうかが問われます。

例えば、遺族年金が支給されるには公的年金に加入すべき期間のうち3分の2以上の保険料納付済み期間が必要です。たとえば30歳であれば、20歳からの年金加入義務期間は10年(120カ月)ですから、そのうち80カ月以上は保険料を支払っていなければなりません。

転職を繰り返したり、正しく年金保険料を支払っていなかったりすれば、万が一の時に遺族は遺族年金を受け取れないのです。このような状況に陥らないために、保険料を納めるのが経済的に厳しい場合は免除や猶予といった特例が定められていたり、亡くなる直近1年間に保険料の未納がなければ特別に遺族年金を給付する救済措置があります。

遺族基礎年金は18歳以下の子を持つ配偶者か、18歳以下の子に支給されます。子の年齢は18歳の3月末までが対象なので、高校卒業までと理解しておけばよいでしょう。また、配偶者は確定拠出年金の死亡一時金同様、事実婚も含まれます。

遺族基礎年金の金額は、子どもの数で決まります。仮に子ども2人とその母親が遺族であれば、遺族基礎年金は年間約120万円で、上の子どもが高校を卒業するまで支給され、その後、年間約100万円に減額され、下の子どもが高校を卒業すると終了します。

遺族厚生年金は、主に配偶者に支給されます。配偶者が女性の場合は、原則終身保障ですが、配偶者が男性の場合、被保険者死亡時に55歳以上というルールがあります。例えば、女性会社員が亡くなった時、夫が35歳というケースでは遺族厚生年金は支給されません。

その場合、遺族厚生年金を受け取る権利は子に移ります。ここでいう子は先述通り18歳以下の子ですから、該当がなければ今度は親に権利が移ります。親は被保険者死亡時55歳以上でかつ生計一時関係にある場合となります。

遺族厚生年金の金額は、被保険者が亡くなるまでの厚生年金加入期間と、支払った保険料に応じて決まります。子どもがいる妻の場合は遺族基礎年金の終了後から、夫死亡時に40歳以上の子どもがいない妻の場合は夫の死後、65歳までの間中高齢寡婦加算という特別な手当も支給されます。

若くても万が一を考えることは重要

若い年代で亡くなる確率は数%であったとしても、やはり万が一に備えておくことは重要です。確定拠出年金に関しては、そもそも金融機関から自発的に死亡一時金の連絡は来ませんので、遺族の手続きが必要です。

公的年金の遺族年金は、確定拠出年金の死亡一時金と異なり、被保険者の年金加入歴などにより金額が異なります。そして、こちらも届け出をしないと受けられません。

自らが動かないといけないという現実とともに、遺族の十分な理解も不可欠です。そのため資産の棚卸をし、明細をまとめて家族と情報を共有したり、家族が困らないよう資料をまとめたりしておくことは重要です。それは万が一の備えだけではなく、資産形成の目標達成のためにも役に立ちます。

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