はじめに

「先進医療特約」は、最近の医療保険やがん保険に加入する際には、もれなくと言っていいほど付帯して提案されています。必ず入らなければいけないわけではありませんが、月額100円程度の保険料のため、万一のお守りとして付けている方がほとんどです。先進医療とは何か? 実際に先進医療を受けるひとはどの程度いるのか?など、必要性を考えてみます。


先進医療とはどんな医療か?

先進医療とは、厚生労働大臣の定める評価療養の内、先進的な医療技術として認められた技術をいいます。医療技術ごとに一定の施設基準が設定されており、施設基準に該当する限られた医療機関のみで行われています。同じ治療が行われている病院があったとしても、先進医療に該当しない場合があることもありますので、注意が必要です。

先進医療にかかわる費用は公的医療保険制度の対象外となるため、全額自己負担となります。ただし、先進医療にかかわる費用以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、公的医療保険の対象となり、高額療養費制度も適用になります。

2023年1月1日現在先進医療として認められている治療は86種類。厚生労働省が公的医療保険制度の対象と認める、または、有効性が認められないなどで、先進医療から外れることがあります。新しい治療法が追加されることもありますので、いつも一定ではありません。

先進医療支払いの例示によく使われていた、先進医療利用実績の多い「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」(白内障手術に用いられる治療)は、2007年7月から先進医療の対象となっていましたが、2020年4月に対象から外れています。2019年12月の先進医療会議報告で、「この治療の有効性、効率性等が十分に示されていないことから、 先進医療から削除する方向で検討することが適当」と記されています。

結果、白内障のそもそもの手術である水晶体再建術は、公的医療保険の対象ですが、多焦点眼内レンズを用いる部分は自由診療になっています。

また、悪性腫瘍の効果的な治療として例示に挙げられる重粒子線治療の内、2016年4月から骨軟部がん(切除非適応の骨軟部腫瘍)、2018年4月から前立腺がんと頭頸部がんが先進医療から公的医療保険の対象に移行しています。このように、安全性や有効性が認められたものは、公的医療保険の対象になっていく仕組みです。

先進医療対象治療一覧は厚生労働省HP先進医療 当該技術を実施可能とする医療機関の要件一覧に掲載されています。

治療費はどのくらいかかる?

先進医療というと保険のパンフレットに必ず掲載されているのが、重粒子線治療と陽子線治療です。部位によって費用は変わりますが、重粒子線治療の平均費用は約318万円、陽子線治療の平均費用は約264万円(令和3年度厚生労働省先進医療会議資料実績報告より算出)といわれています。

X線の従来の放射線は、体に入ると徐々に吸収され、放射線量が減少していきます。そのため、深部のがん治療が難しく、がん細胞前後の正常な細胞組織を壊してしまう問題がありました。それに比べ粒子線は、体の表面ではエネルギーの放出が小さく、がん細胞の深さや大きさに合わせて、ピークにエネルギーを放出し、がん細胞にダメージを与え、周辺の細胞組織に与える影響を抑えることができるので、効果が高いといわれています。

高額な治療費としては
・「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術及び十二指腸空腸バイパス術」:72万円
→重症肥満症に行う腹腔鏡による手術(内科的治療に抵抗性を有し、糖尿病の人に限る)

・「自己腫瘍・組織及び樹状細胞を用いた活性化自己リンパ球移入療法」:41万円
→進行がんに効果がある。自己細胞をとり培養させ、キラー細胞を誘導させて体内に戻す療法手術や治療に限らず、検査や測定にも先進医療対象のものがあり、必ずしも高額ではなく4~5万程度の場合もあります。

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