はじめに

早いもので、今年も残り2ヵ月を切りました。ハロウィーンも終わり、小売業界では徐々に年末商戦が本格化しようとしています。

アメリカでは1年で最もモノが売れる日といわれる「ブラックフライデー」。大幅な値引きによってたくさん客が押し寄せて小売業者が黒字になることが由来で、11月の第4木曜日の感謝祭翌日から開催される大規模なセールです。

昨年初めてブラックフライデーに参戦したイオンは、セール期間中の売り上げが前年同期に比べて2割近く伸びたといいます。2年目を迎える今年は、どんな戦略で臨むのでしょうか。


“ブラック”にちなんだ目玉商品

「景気が上向いていると実感するほどの賑わいでワクワクする」「この時期にセールがあると年末まで待たなくても助かる」——。イオンが昨年、初めて取り組んだブラックフライデー商戦には、多くの歓迎の声が寄せられたといいます。

実際、昨年は3日間のセール期間で売り上げが前年同期比で2割近く伸びました。好評を受けて、今年はセール期間を1日増やし、11月23日に「ブラックフライデー フライングセール」、24日から26日まで「ブラックフライデー」を実施。本州と四国の約400店舗で4日間にわたって販売を強化します。

一方で、昨年は反省点もありました。たとえば、食料品のセール企画をほとんど用意していなかったため、「食料品を増やしてほしい」という声が届きました。

目玉商品は“ブラック”にちなんだ食品群

その反省を生かし、今年の目玉にしたのは、果物を詰め合わせた「ブラックボックス」や、黒毛和牛、黒豚、クロマグロなど、“ブラック”にちなんだ商品です。ほかにも、紳士スーツ、冬物衣料、羽毛布団、クリスマスギフト用のおもちゃ、生活家電が3~5割引きになる予定です。

「毎年開催してもっと内容をブラッシュアップしてほしい」という要望もあり、さらなる期待度の高さを感じていると、イオンリテールの広報担当者は話します。今年のブラックフライデーは4日間で前年同期比25%の増収を目指すとしています。

中国で話題の“あのセール”も導入

キャンペーンを展開するのは、実店舗だけではありません。ブラックフライデーに先行して、今月10日からの8日間、インターネット上で「サイバー“e”セール」を新たにスタートさせます。

これは、中国で毎年開催されている「独身の日セール」にちなんだものです。1人を意味する「1」が4つ並ぶ11月11日は、中国で「独身の日」と呼ばれ、大々的にネット通販のセールが行われています。

ファッション、化粧品、携帯電話、家電など、イオンリテールでの対象商品は13万点におよび、イオングループ15社、24サイトが参加します。スーツ4点セットを1万1,111円(税抜き)で提供するなど、“11月11日”にちなんで、1並びの価格に設定した商品を用意。10日15時からはネットWAONポイントが11倍になる企画も予定しています。

「ネットショッピングの楽しさを体験してもらい、ロイヤルユーザーの獲得を図りたいと考えています。このセールで11月は前年比で約2倍のEC売り上げを目指します」(広報担当者)

年末商戦の先食いにならない?

実店舗とネット通販の両方で新しいイベントを導入し、消費を喚起しようというイオンの取り組み。その狙いについて、イオンリテールの広報担当者はこう語ります。

「11月はこれまで比較的、消費が落ち込む傾向がありました。年末のバーゲンに備えて消費者の財布の紐が固くなるときに、サイバー“e”セールやブラックフライデーなどを開催し、新たな買い物文化をつくることで消費を盛り上げていきたいと思っています」

しかし、11月といえば、クリスマスを核にした年末商戦の前月。その前に新たな2大セールを開催しては、需要の先食いになってしまわないのでしょうか。

「先食いというよりも、年末商戦に向けたキックオフ的なプレイベントとして位置づけています。11月と12月で売り上げが分散しても、広義の年末商戦としてトータルで増収になれば問題ありません」(広報担当者)

また、昨年はコートなど冬物の衣料品の売り上げが40%近く伸びたものの、「予想以上に売れて準備が追いつかず、年末商戦ではチャンスロスがありました。今年はそうならないように準備を早め、12月の年末商戦は11月とは違う商品を出していきたい」(同)と、セールごとに異なる商品を投入する計画を打ち出します。

はたして、ブラックフライデーは日本に浸透し、11月の風物詩となるのでしょうか。こうした動きが広がれば、消費者にとっては年末まで待たずに安く買い物ができるお得な季節となりそうです。

(文:編集部 土屋舞)

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