はじめに
31歳の孫社長が、びっくりするほどやり手だった!
じつはサンリオの業績は、コロナ禍による影響を受ける前から低迷していました。2014年3月期に営業利益210億円の過去最高益をつけてから、2022年3月期で赤字を掘るまで8期連続の減益という失態。
かつては、マライア・キャリー、レディー・ガガ、キャメロン・ディアス、ブリトニー・スピアーズ、パリス・ヒルトンなど、名だたる世界のセレブを魅了したキティちゃんですが、さすがにその人気だけでサンリオの母体を支えるには無理があります。国内では、キャラクターが増えすぎたことによる物販部門の利益率の低下や、テーマパークの相次ぐ閉鎖など、問題を多く抱えていました。
そんな中、2020年6月、創業者である当時92歳の辻信太郎社長から、孫である31歳の辻朋邦氏に後任を任せるとの発表がなされました。正直、孫かわいさに経営を見誤ったかと思いましたが、じつはこの朋邦氏、とんでもなくすごかった!
2021年5月25日(火)に開催されたWeb説明会にて、2024年度を最終年度とする中期経営計画を発表。その際に朋邦氏は、「トップダウン待ちで、部分最適の意識が強い組織。頑張っても報われない、失敗しても責任を問われない人事制度。これらが実行力を欠けさせている大きな要因」と甘えた社内風土を痛烈に批判し、「これまでの非合理な組織運営で低下した士気を高める」「旧態依然のライセンスビジネスにとどまっていた」「悪いものは捨て、第二の創業をやり遂げる」と、毅然と宣言したのです。
中期経営計画の中には、最終年度である2024年度までには営業利益30億円を目標に掲げていましたが、今期2023年度の予想営業利益が106億円ですから、すでに大幅超過しています。
直近の決算説明書には中期経営計画の実行状況・KPI進捗が掲載されており、ひと目見ただけで、順調な進捗具合がわかります。しかも、細かく項目出しされていて、ぼんやり夢見がちな計画を出す企業も多い中、ピリっと緊張感を感じます。
株価はまだまだ過去最高には届かず
株価は、赤字が縮小し始めた2021年5月頃から上昇に転じ、1,600円から、直近では5,390円まで3倍以上にまで駆け上がっています。とはいえ、過去最高値の9,040円には余白があります。
2代目社長の就任から3年足らず、最近の不祥事の例もあるように、まだまだ内部改革は道半ばのようです。ただ、業績改善のスピードは、目を見張るものがあり、今後さらによくなるイメージがビビッドに湧いてきます。
世界中で知られているわりには、時価総額はまだ5,000億円に届いていないというのも、株価上昇の伸び代を感じます。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。