はじめに
日常生活や生き方を通して、お金の価値観・人生観を考えるきっかけになるような話題の本をMONEY PLUS編集部がピックアップ。書籍の担当編集者に読みどころやこだわり、制作秘話などを語っていただきます。
今回は、塚原哲著の『銀行・保険会社では教えてくれない 一生役立つお金の知識』をご紹介します。
『銀行・保険会社では教えてくれない 一生役立つお金の知識 』塚原哲著
人生において何度も選択を迫られる、お金の使い方。お金についての基本的な知識が乏しいために、銀行や保険会社の担当者に言われるがまま「払う必要のないお金」を払う選択をしてしまう人も少なくありません。“本当に払うべきお金”と“払う必要のないお金”の見定め方を「金融機関を利用する側」の視点に立ち、丁寧に解説した一冊。
四六判/並製/312ページ/日経BP社/2017年10月17日
担当編集者のコメント
相手チームに戦略の相談をする……。ゲームに参加するとき、普通はそんなことはしませんよね。ところが、お金の世界では多くの人が何のためらいもなく相手チームにアドバイスを求めています。
住宅ローンを組む、保険に入る、投資信託を買う……。どれも実態は金融機関と利用者のお金の分捕り合戦です。金融機関にお金の相談をするのは、相手チームの指図でゲームを戦うようなものでしょう。金融機関は営利組織です。担当者が会社寄りのアドバイスをするのは当然でしょう。
普通に考えれば「そんなの当たり前だろう」と誰もが思うはずです。ところがお金のこととなると「自分に有利なアドバイスをしてもらえる」と勘違いをしてしまう。
著者の塚原哲さんは「金融機関にお金の相談をするのは、その構造上、ナンセンス」と本書の中で断じます。
塚原さんは全国の主要企業に招かれて、お金をテーマにした講演を年間200回以上もこなすという人物。ファイナンシャル・プランナーですが、労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」を立ち上げ、複数の講師を束ねて全国の労働組合からの講演依頼に応えています。
そんな塚原さんが日々、痛感しているのが「払う必要のないお金を払っている会社員が本当に多い」ことだそうです。
「物を買うとき、お金を借りるとき、投資や運用をするとき、お金を貯めるとき……。人はお金のこととなると、目先のことや自分の都合しか見えなくなりがちです。これはお金の構造全体のことを広い視野、長い時間軸で捉えられていないから。つまり『お金の構造』を理解していないのです。お金と付き合うときは、お金をやりとりする相手の立ち位置や、やりとりの結果として、将来、起こりうることを考えて行動しないと、必要のないお金を払うことになってしまうのです」
著者のホームグラウンドは企業の労働組合です。金融機関からの講演依頼には一切応じていません。
本書では、お金の貯め方、使い方、税制、退職金の仕組み、保険や住宅ローンの選び方など7つの柱を立て、それぞれの場面で、徹底的に利用者側の視点から『お金の構造』について解説します。難しい章もありますが、必要な章だけ拾い読みもできます。
大手メーカーの労組出身というバッググラウンドを持つ塚原さんの願いは「多くの会社員に“知らないが故のムダ遣い”から卒業してほしい」こと。ぜひ、本書で『お金の構造』を知ってください。
(日経BP社 担当編集:日経マネー編集部 本間)