はじめに

2024年からNISA(少額投資非課税制度)が拡充され、新しいNISAとして導入される予定です。日本の株式市場が堅調であることも追い風となっており、制度の拡充に合わせて投資デビューを考える人が増えています。また、長きにわたり物価が上がらなかった日本において、足元では物価が大きく上昇していることも、日本人にとって資産運用を意識させる要因となっているのでしょう。今回は新しいNISAで投資デビューを考えている初心者が意識すべきことをまとめていきたいと思います。


「絶対」と「強制」とは無縁

2年以上にわたるコロナ禍を終え、最近はコロナも落ち着き、街中には人手が戻り、繁華街や観光地は訪日外国人も含め、非常に多くの人で賑わっています。私も有難いことに、全国各地に講演で呼んでいただくことが増えています。講演が終わると聴衆の方から個別にお声掛けいただくこともあるのですが、そのなかでよくあるのが、「来年からNISAが新しくなるので、それにあわせて投資デビューをしてみたい」というものです。やはり、何か新しいことをはじめるときはキッカケが必要ですから、とてもいいタイミングだと思うのですが、少し気になる発言が2つあります。

1つ目は「NISAで投資すると絶対もうかる」と勘違いしているような発言を耳にします。少しでも投資を学んだことがある方からすれば、そのようなことはないとすぐに理解できるのですが、意外とそう思っている方もいるのです。その理由を聞いてみると、国が「貯蓄から投資へ」と掲げ、そのために非課税制度を作っているのだから、損するはずがないというのです。投資は不確実性にかけるからこそ、リターンが期待できるのであって、場合によっては損をしてしまう可能性もあります。

2つ目は「老後資金のために投資をしなければいけない」と、あたかも投資を強制されているような感覚に陥っている発言です。前述の通り、投資をしたことで、かえって資産が減る可能性もあります。老後資金が不安という気持ちは分かりますが、必ずしも資産運用をして備える必要はなく、仕事で稼ぎながら貯蓄をするというスタイルでも問題はありません。

なによりも基本に忠実

このように、投資をする前に最低限知っておかなければならないことすら分かっていないケースも見られますが、さすがにその程度は理解しているという方は、次のステップとして老後資金のための資産運用で押さえておくべき基本を理解しましょう。1つ目は「長期投資」です。投資期間を数日や数週間ではなく、20年、30年と長くすることによって、複利の効果で資産が効率よく増加することが期待できます。

しかし、いざ投資を始めると、毎日株価が変動するなかで、自分の資産の評価額も増減するため、「今日は何%儲かった」とか「何%損している」など、一喜一憂してしまうものです。しかし、20年、30年と長く続ける場合、いちいち株価の変動を気にしていたら、精神的にまいってしまいます。そこで重要なポイントになるのが2つ目の「つみたて」です。現在はネット証券でつみたて投資の設定をしてしまえば、毎月同じ投資信託を定額で買い続けてくれるため、いちいち株価を見る必要もなくなります。そうなれば、日々の株価の変動に心を揺さぶられることはなくなります。

そして、最後に3つ目のポイントは「分散」です。自分の資産を1つの会社の株式にだけ投資をしてしまうと、自分とその会社は一蓮托生ということになってしまいます。そこで、投資先を複数に分散することが重要なのですが、単純に投資先の数を増やすだけでなく、投資先の国・地域、通貨、業種など様々な角度から分散を図ることで、リスクを低減することができるようになります。しかし、それを全て自分でやるのは難しいですから、最初から分散されている投資信託を活用しましょう。

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