はじめに
住宅ローン控除とふるさと納税
「今後、住宅ローン控除が少なくなるかも!?」なんてニュースを目にして、駆け込みで控除を受けようとされる方もいらっしゃるようですね。
住宅ローン控除とは、マイホームを買う時に借り入れをすると、その借り入れの残高に応じて税額の控除が受けられる制度で、他の節税対策よりも効果が大きいと言われています。一定の条件を満たせば借入金の残高に対して0.7%の税額を、10〜13年間の控除してもらうことができます。
ここで大事なのは、「所得控除」ではなく「税額控除」が受けられるという点です。
よく聞く「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」「生命保険料控除」などは、「所得控除」といって、税率をかける前の儲けの金額から差し引いてくれる控除です。控除で引いてもらってから、税率を掛け算するのです。
ところが、住宅ローン控除は「税額控除」なので、税率をかけた後の税額からまるまる引いてくれます。まず所得税から引いて、引ききれない分を住民税から引いてくれるので、うまくいけば両方の税金が0円になる人もいるほどです。「節税効果が大きくて、なんて……喜ばしい!」という制度ですが、税金が安くなりすぎて、他の節税対策が効かなくなることがあるのです。
特に注意して欲しいのは、ふるさと納税をされる方です。
ふるさと納税は住民税が安くなる制度です。まず、上限額の範囲内で好きな自治体に寄附をして返礼品をゲットし、あとから寄附額 ― 2,000円分の住民税を安くしてくれるという制度ですが、寄附できる上限額に注意が必要です。
前の年の給与の状況で上限額を計算して寄付をすることになるのですが、住宅ローン控除などの税額に影響が大きい控除を受ける場合は、せっかく寄附をしても上限額を超えて引いてもらえなかったり、納税額が低すぎて引ききれなかったりということが出てきます。
最近は、住宅ローン控除などの控除を考慮して上限額を試算できるふるさと納税サイトも出てきていますので、しっかりと活用して本当にお得なのはいくらまでなのかを事前に確認しましょう。
副業の経費
政府が推進する働き方改革の影響もあり、「職場が副業OKになりました」という方も増えてきていますね。そして、副業で収入を得はじめると、それに対応する経費も支払っているので、収入から経費の支払い分を引き算して儲けを算出してから税金の計算をすることになります。
副業が順調という方が「始めたばかりの副業が思ったより順調で利益(もうけ)が出そうなので、何か買ってマイナスにしないとダメですよね?」とおっしゃってましたが、どう思いますか?
事業としての収入を獲得するために本当に有効な支出なら、経費として認められますし、いずれ買おうと思っていたものであれば、節税対策として思い切って支払っておくのもいいでしょう。でも、要るか要らないかもわからない、「とにかく経費を使わなければ!」という強迫観念からいい加減に支出することは感心できませんね。なぜなら、節税のために経費を使ったとしても、不要なものを買って手元のお金が俄然減ってしまっているからです。
給与で年収460万円までの方は所得税10%と住民税10%で、その上さらに儲けたとしても20%ちょっとの税金を払うだけですが、要らない買い物をすると100%その金額を失って、20%の税金を負けてもらえるだけです。事業や副業をされている方は、ムチャな経費を使って節税を考えるよりも、まずは使える所得控除がないか、そしてiDeCoやふるさと納税など、節税対策として国が推奨している方法を活用すること考えてみてください。