はじめに
日経平均は7月の第一営業日に目先の高値をつけた後、元気がありません。6月までは月間ベースで6連騰、つまり毎月上昇する相場が続いてきましたが、年後半に入ったとたんにその勢いは失われてしまいました。
日経平均の日足チャートを見ると、上述の通り7月3日の高値3万3753円を頂点として、その前の高値6月16日の3万3706円と、その後の高値8月1日3万3476円の3つの山が並んでいる形状です。こうしたチャートの形状を「三尊天井(さんぞんてんじょう)」(英語でヘッド・アンド・ショルダー)と言います。
出所:マネックス証券サイト
三尊天井は相場が目先の天井を打ったサインとされ、これが示現するとその後は下落トレンド入りとされます。果たして日経平均は心理的な節目である3万2000円を下回り、本稿執筆時点ではいまだにその水準を回復できていません。今年も後半戦に入り、はや2ヶ月が経とうとしていますが、日本株はこのまま再浮上のきっかけをつかめないまま調整局面が続くのでしょうか?
日本株全体に悲観的になる必要はない
筆者はそうは思いません。まず、三尊天井のサインについてですが、これの意味するところは、あくまで「当面の天井」を形成した、ということです。では、その「当面」とはどのくらいの期間を指すのでしょう。それは「場合によりけり」です。もしも長期の波動で見て三尊天井を形成したのであれば、それは大天井を示唆している可能性が高いです。その高値を抜くには長い時間を要するでしょう。しかし、今回の三尊天井はわずか3ヶ月の間に現れた3つの山によるものです。相場のサイクルから見れば、当然、短期の(=目先の)天井だということでしょう。
テクニカル分析というものはすべて過去のパターン分析です。ということは、当然ですが過去に何度も三尊天井があったはず。それを乗り越えて今は33年ぶり高値をつけているのですから、三尊天井など一時的なことで、その後も高値を追うチャンスはいくらでもあるということです。
その33年ぶり高値ですが、日経平均は7月が直近の最高値でした。しかし、TOPIXは今月8月の初めにつけた高値が33年ぶり高値で直近の最高値。6月、7月よりも8月のほうが高い。その後の安値も7月安値を下回らず、依然として右肩上がりの基調を維持しています。三尊天井は日経平均だけの話で、TOPIXでみれば、全く三尊天井などではないのです。そう考えれば日本株全体に悲観的になる必要はないでしょう。
夏場の相場は軟調になることが多い
足元の株価の調整の理由ですが、第一には米国の長期金利の上昇が重荷になっていると考えます。そこに中国景気への不安が下げを増幅している構図です。さらに言えば、もともと夏場の相場は軟調になることが多いという季節性もあります。実際に過去20年の日経平均の月別パフォーマンスを調べると8月はワースト2位です。市場参加者の多くが夏休みでマーケットから離れ、活気がなくなる「夏枯れ」のイメージ通りです。今年は冒頭で述べたように上半期のパフォーマンスが非常に良かったため、反動が出やすいタイミングということもあったのでしょう。
中国の景気が弱いというのは事実ですが、報道されているほど悲観的かと言えば、それほどでもないというのが筆者の見方です。よく引き合いに出される3つの問題 - 不動産不況、若年層の失業、地方政府の債務というのは構造問題であって今に始まった話ではありません。解決には相当な時間もかかるでしょう。ただ、それらを別にして景気の好況・不況という循環的なサイクルは回っていきます。あまり構造問題の深刻さばかりに目を向けないほうが資産運用の観点からは賢明です。