はじめに

米消費者物価指数の発表が転機となるか

季節性の問題は夏が終わることで自然に解消します。すると残るは米国の長期金利の上昇が一服するかという点ですが、これはFRBの利上げ次第だと言えます。そのFRBの利上げスタンスを探る材料になるのが、今週末のジャクソンホールでのパウエル議長講演、来月発表される8月分の米消費者物価指数(CPI)、そして9月後半のFOMCです。おそらくジャクソンホール公演でパウエル議長はニュートラル、もしくは若干タカ派的なスタンスを固持するでしょう。

転機となるのは来月発表される8月分のCPIだと見ています。前段で、足元の株価の調整の理由について、第一には米国の長期金利の上昇が重荷になっていると述べました。直近で米国の長期金利が上昇ピッチを速めるきっかけになったのが、7月のCPIの上振れでした。10日に発表された7月のCPIは前年同月比の上昇率が3.2%となり、13ヶ月ぶりに加速しました。これを受けて市場では、米国のインフレは執拗で根強く、従ってFRBの利上げは長期化せざるを得ないという思惑が高まりました。

これが米国長期金利上昇の背景です。しかし、7月のCPIの上振れはテクニカルな要因が影響しています。CPIの上昇率が6月が3.0%だったものが7月は3.2%と加速したように見えますが、実は今年の物価指数が伸びたわけではなく、前年同月比の比べる対象である昨年7月の物価指数が(異例なことに)若干低下したからです。そのせいで「前年同月比」では高い伸びに見えて瞬間風速を示す前月比では加速していません。米国のインフレは着実に落ち着いてきており、9月に発表される8月のCPIでそれが確認されるでしょう。

それを受けてFOMCが再度利上げを見送れば、一気に相場の潮目は変わるだろうと考えています。

この記事の感想を教えてください。