はじめに

日本の年金運用に学ぶリバランス

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のリバランス例を参考に、個人投資家としてのアプローチ方法を考えてみましょう。

GPIFは世界最大の年金運用機関であり、約220兆円ものお金を運用しています。2023年4-6月期の運用パフォーマンスは9.49%のプラスで、運用益は18兆9,834億円となりました。その運用方法やリバランスは、多くの投資家から注目されています。

GPIFの第4期中期目標期間(2020年4月1日からの5ヵ年)における基本ポートフォリオは、国内株式、海外株式、国内債券、海外債券を25%ずつ保有する方針で運用されています。 基本の資産構成割合を国内株式は25%から±8%、外国株式と国内債券は25%から±7%、外国債券が25%から±6%と設定されていて、許容できる幅よりも割合が変動してしまった場合はリバランスがされることになっています。

例えば、2023年4月から6月にかけてGPIFの国内株式比率は14%上昇したため売却され、比率が下がった国内債券が購入されるリバランスが行われたとみられています。これは先述した(2)のリバランス法だといえますが、GPIFは配分比率を一定の範囲で維持するために、リバランスを実施しています。

GPIFのように運用方針があらかじめ決まっていて、それによって冷静に資産の再配分を行うというのは、個人投資家にとっても重要な教訓だといえるのではないでしょうか。長期投資であれば市場の短期的な動きに一喜一憂せず、自分の投資目的や期間に合わせた資産配分を維持するために、冷静な判断でリバランスを行うことは、投資をする上で大切なことだと考えます。

またGPIFの資産配分はあくまで例ですが、大手運用組織の動きをチェックすることで、市場の大局的な動向や、リスクの側面を理解するヒントが得られるといえるでしょう。大手の運用組織の動きから学び、その教訓を自分の投資活動に活かすことで、より賢明な投資家となることができます。市場は常に変動しますが、冷静な判断と計画的なアプローチで、投資の成功を目指しましょう。

長期投資というと、NISA(少額投資非課税制度)を連想される方もいらっしゃると思います。最後に2024年から開始予定の新NISAにおいてのリバランスについてもお伝えします。

新NISAの投資先も、市場の動きに応じてそのバランスが変わってきます。市場変動によって保有しているポートフォリオが投資目的やリスク許容度と合わなくなった場合、新NISA内でのリバランスが必要となる可能性があります。

ただし、新NISAは投資枠が決まっていることもあり、売却するよりは、新たな年度に買い入れる商品のバランスをとることでリバランスをして行った方が、より非課税のメリットを受けられる場合もあるでしょう。ご自身の投資戦略のもとでリバランスも検討していくことが大切です。


リバランスは投資の長期的な成功をサポートする重要なプロセスです。定期的にポートフォリオの見直しを行い、必要に応じてリバランスを行うことで、より安定した収益を目指しましょう。

しかし、頻繁なリバランスは取引コストが増加するリスクも伴いますので、適切なタイミングと方法でのリバランスが求められます。投資の目的やリスク許容度を常に見直しながら、賢明な投資判断を行いましょう。

なお、ポートフォリオを考える上では、保有する資産を常に把握することが大切です。表計算ソフトなどで自分で入力・管理する方法もありますし、複数の口座を連携して、まとめて見える化してくれるサービスもあります。保有する資産を把握し、定期的に見ることを習慣づければ、とるべき行動を速やかに判断でき、それは投資において適切なリスク管理に繋がります。

皆様の投資の参考になれば幸いです。

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