はじめに

投資をするうえで、魅力的なリターンに目がくらみ、あるいは語られる成功ストーリーに心が躍り、思わずリスクを軽視してしまうということが度々あると思います。例えば、前編でお伝えした「市場リスク」であるリーマンショック、コロナショックでは無数の投資家がリスクの深淵に呑み込まれていきました。

私たちの資産を持続的な成長へと導くためには、リスクを理解して、そのリスクが顕在化した時にどう対処するか考えておくことが大切です。前編の【市場・信用・地政学リスク編】に続き、今回の後編では【通貨・流動性・インフレ・政治リスク】について解説します。皆様とご一緒にリスクについて理解、把握していきたいと思います。


【4】「 通貨リスク」とは?

「通貨リスク」は、外国通貨建ての投資を行った場合、為替レートの変動により損失を被るリスクです。新NISAを利用して、ETFや投資信託も含めて海外にも投資を検討されている方は多いと思いますので、為替リスクは気にしておいた方が良いでしょう。国際情勢や各国の金融政策は通貨の価値に大きく影響しますので、常にチェックが必要です。

対策としては為替ヘッジを行い為替変動の影響を軽減することや、通貨リスクを分散させるため、複数の通貨で投資を行うことが考えられます。

また、「為替リスク」と関連があるのが「金利リスク」です。これは、市場の金利の変動により損失を被るリスクのことで、特に債券の価格が下がるリスクとなります。

中央銀行の政策金利変更などは、市場金利に影響を与える要因となり、それが為替動向に影響するので、金融政策の動向を注視することが大切です。金利リスクへの対策としては金利リスクを分散させるため、異なる残存期間の債券を組み合わせる、変動金利型の金融商品をポートフォリオに組み込むことで、一定のヘッジを行うなども良いでしょう。

【5】「流動性リスク」とは?

所持している資産を現金化(売却)する際に、市場の流動性の低さから損失を被るリスクです。特に取引量の少ない資産や、特定の状況下での取引が困難な資産に関連します。

例えば、規模が小さい市場で扱われる資産であったり、知名度が低い株などは、売買する人が少ないため、売却しようとしても買い手がおらず売ることができない可能性があります。なおそのような銘柄は、機関投資家が大口資金を入れても買いにくく、機関投資家の投資対象にならないので流動性が上がりにくいともいえます。

このようなことから、小規模な市場で扱われる資産や、取引量の少ない銘柄は流動性リスクが高くなりやすいのです。

投資初心者の場合は特に流動性リスクの高い(流動性の低い)銘柄や商品を避けるため、投資する市場や商品の流動性を事前に調査し、流動性が高い資産を選択した方が良いでしょう。もしリスクを承知で保有する際は、高流動性のアセット(主要な株式や債券)をポートフォリオに含めたり、不動産や土地などの非流動性資産の保有比率を適切に管理し、十分なキャッシュポジションを維持するなどの対策が必要です。

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