はじめに

投入される最新技術と寝る暇もない裏方

この11月11日前後に出荷される荷物は、国家郵政局の予測によると合計15億個。これは通常の3倍にもなるといわれています。ちなみに日本の宅配便等の数は1年間で40億個です(2016年、国土交通省調べ)。

直近、日本でもECの広がりによって配送業者の疲弊が問題になっています。中国ではこの宅配のピークをどのように乗り越えているのでしょうか?

実は「双十一」は、企業にとって1年で最大の「売り」の時期であると同時に、最新技術を競う場でもあります。物流業もその例外ではなく、RFIDなどのタグを付けた効率的な仕分け、ロボットによる倉庫管理、無人の配送など、毎年巨額の投資とともに新しい技術が投入され、高い効率を上げています。

しかし、流通の中継地点がいくらスマート化され、効率が上がったとしてもラストワンマイルを担うのは人間、快递(クワイディ)と呼ばれる配達スタッフです。

彼らはこの時期非常に忙しくなり「1日に400個荷物を届けた」「平均睡眠3時間」などエピソードには事欠きません。彼らの頑張りもあり、商品は大きな混乱もなく通常の配送に1~3日加えた程度で手元に届くことになります。

アリババは物流の末端を支える彼らを重視しており、ニューヨーク証券取引所に上場した際、創始者であるジャック・マーは通常経営陣が手にする取引開始の鐘を快递の代表(を含む8人)と共に鳴らしました。

天猫は日本でいえば楽天のようなECモール形式なので、実際には出店企業が商品を販売します。出店者には「双十一」の売上が年間売上のかなりの比率を占める場合も多く、売り手である各企業のEC担当者にとっても、この日は決戦の時となります。

セールが終わった後の天猫トップページ(https://www.tmall.com/

上海で働く外資系化粧品メーカーに転職したばかりの女性は、「私が所属するECチームはこの日の準備のため、1ヶ月前に広東省へ派遣され、1週間のトレーニングを受けました。11日当日は土曜日だというのに朝4時まで、翌日も深夜2時まで残業でした……。でも、その甲斐あってラスト5分でなんとか売上目標を達成しました」と話してくれました。

そんな彼女も仕事の合間に自分の化粧品のほか、父親へのプレゼントとしてブランド物のスポーツシューズを購入したそうです。

双十一、隣は何を買う人ぞ

では、中国人は何を買っているのでしょうか?

発表されたカテゴリ別の売上割合を見ると、冷蔵庫や洗濯機など大型家電が1位になっています。しかし、実際に身の回りの中国人に話を聞くと、違った声が聞こえてきました。

データ出典:http://www.maigoo.com/news/469356.html

なかには洗濯機を買った人もいましたが、「ちょうど壊れたので購入したが、ぜんぜん安くなっていなくてがっかりした」とのこと。おそらく高単価が要因となって目立っているのでしょう。

周囲からもっともよく聞かれたのは「子供用の粉ミルク半年分」「おむつ」「犬の餌」「トイレットペーパー」などの日用品・消耗品です。いい話ではありませんが、価格や割引率を正しく表示しない業者も多い中国では、「自分が相場を把握しているものを買うほうが騙されにくい」と教えてくれた友人もいます。

ちなみに私自身は先日割ってしまったご飯茶碗と普段は高い輸入ビールという、彼らと近い買い物をしました。昨年は食用油を大量に買ったところ、今でも使いきれず後悔しているところです……。

もちろん派手に買い物をする層もいて、とある若い友人は6,000元(≒約10万円)近くも買ったと言います。

6000元使った友人の明細。左下に青字で今月の消費「5776.79元(≒10万円)」の記録が

彼女は「日用品や服のほか、香港ディズニーランドのホテルと1日入場券を購入したために大きな金額になった」と話していましたが、8,000元を越えないであろう彼女の月給から6,000元を使ってしまうということが、このお買い物の日の狂熱ぶりを表していると思いませんか? ちなみに、この彼女ですら超級会員には手が届かないようです。

日本でも消費の起爆剤、お買い物デーはいかが?

冒頭でも述べたように、日本にも大手ECサイトが仕掛けるこうした“お買い物デー”があります。

Yahoo! Japanは2015年から本家の「双十一」を真似るように、同じ11月11日「いい買物の日」を実施しています。ほかにも、楽天は楽天スーパーセール、アマゾンはプライムデーやサイバーマンデーというセールを行っていますが、いずれも名前は知られてはいるものの、まだ歴史が浅いこともあり、具体的にいつ行われるのか、どのようなものなのかはあまり周知されていないのが実情です。

アリババ発の「双十一」は記憶に残りやすい日程を選んだことに加え、この日に業界を横断した多くの企業が集中してイベントを実施した結果、社会の空気が創り出され、実際に大きな消費が生まれました。

人口で勝る中国に規模ではなかなか勝てないとはいえ、日本のECも15.1兆円に達した立派な市場です。

横並びが好き――は日本人の気質として否定的に使われることが多い言葉ですが、こんな時こそ得意の横並びでビッグウェーブを起こし、経済をもっと盛り上げていければいいのにな、と思います。

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