はじめに
10月下旬から続いている決算発表がピークを迎え、今週末に終了します。3月期決算の企業、約2500社の第2四半期の発表です。今回は今年3月に東京証券取引所(以下、東証)が低PBR (株価純資産倍率)企業に対策を要請したことをきっかけに、配当や株主優待を見直す企業が多く見られます。
株主優待を廃止した日本取引所G、ゲオ、エクシオG、みずほリース
10月26日、日本取引所グループ(8697)は、2025年3月をもって株主優待制度を廃止することを決定しました。日本取引所グループは傘下に東証などを収める総合取引所グループです。こちらの株主優待は個人投資家からとても人気があり、株主優待の内容は毎年3月末時点で100株以上(発表日の終値・2897円)の株主に、保有年数に応じてQUOカードを贈呈というものでした。特に保有期間3年以上で4000円分のQUOカードを受け取れる制度は魅力的で、競合不在の安定的な経営を維持できる企業への投資は個人投資家にとって迷いが少なく重宝されていました。廃止の理由は、「株主の皆様への公平な利益還元のあり方について検討をした結果、配当等による利益還元に集約することにした」と発表しています。
またゲオ(2681)も100株以上を保有する株主にリユース割引券(2000円分)を年2回贈呈していた株主優待を廃止し、「より公平な利益還元を実施する」との理由から増配を発表しました。エクシオグループ(1951)やみずほリース(8425)なども同様の措置を公表しています。
理由は海外投資家への配慮?
前回の記事で日本市場の約6割の参加者は海外投資家であると記述していますが、海外投資家は日本国内に拠点を置いていないのでQUOカードを受け取り、実際に日本で使うことはできません。このような状況の企業は海外投資家から投資先として排除されてしまう可能性が高いのです。企業自体に価値があっても株主優待がデメリットになり、足を引っ張ってしまっては本末転倒であると企業側は考えたのでしょう。“公平な利益還元”を、と謳うのはこのような背景が絡んでいると推測できます。(※編注:初出時「QUOカードには課税がありません。」と記載しておりましたが誤りでした。訂正してお詫び申し上げます)