はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

冬のボーナス支給額がほぼ判明したのですが、ギリギリ児童手当の制限を越えてしまいそうです。今から保険などに入って、今年の所得控除を増やす方法はないでしょうか?
(40代前半 既婚・子供3人以上 男性)


野瀬: ご質問ありがとうございます。まず気をつけていただきたいのが、児童所得の所得制限を計算する場合の「所得」です。

児童手当の基準となる所得って?

所得というと「収入-経費-各種控除」である「課税所得」をイメージしがちなのですが、実は児童手当の所得制限を計算する上で基準となる所得は計算方法が違います。

ポイントは2つ。

1:収入には上場株式の譲渡による所得を含めない

よくある質問ですが、株の売買に関する所得に関してはこの計算には含めません。逆にいうと、FXなどの雑所得や配当所得、そして土地の売買などに関する所得は含めることになります。

もし今の計算で株の売却益を入れているのであれば、除外してみましょう。

2:差し引ける控除が定められている

所得税の計算時には差し引くことができる、社会保険料控除や基礎控除、扶養控除などを差し引けません。

差し引けるのはサラリーマンの額面給与から「給与所得控除」を差し引いた「給与所得」から、(a)雑損控除、(b)医療費控除、(c)小規模共済掛金控除になります。

厳密にはほかにも差し引ける控除はあるのですが、寡婦控除や障碍者控除など自分の意思でコントロールできないものですので、今回は触れません。

所得控除は増やせるのか

さて、ポイント2より、質問者の方がおっしゃる「保険に入って所得控除を増やす」方法は不可能であるとわかります。

そうなると(a)雑損控除、(b)医療費控除、(c)小規模共済掛金控除の3つのうちどれかを増やすことが必要になるわけです。

(a)雑損控除は盗難や天災などによって住宅や家具に被害を受けた場合、所得の計算上差し引くことができるというものです。児童手当を受けるために“天災を受ける”というのは現実的ではないので少し難しいですね。

ただし、この雑損控除には、台風や火事などだけではなくシロアリ被害なども含まれますので、もし害虫被害があった場合は試してみる価値があります。

2つ目の(b)医療費控除については多くの説明は不要かと思います。

原則年間10万円以上の医療費がかかった場合、その分を所得税の計算から差し引くことができるというものです。

注意点は、生計をひとつにしている家族なら同居していなくてもOK、交通費も含めてOK、薬局で買う風邪薬もOKという点です。

一人暮らしをしている大学生の息子の医療費も、通院に使ったタクシー代も、風邪を引いた時に買った薬代も対象になるのです。これらを含めると、家族単位だと意外と年間10万円以上の医療費を払っているものです。

今からでも間に合う方法としてはベストかと思いますので、集計してみてはいかがでしょうか?

最後の(c)小規模共済掛金控除ですが、これは金額をある程度コントロールできるので便利なのですが、自営業の方を対象とするもので、質問者の方はサラリーマンとお見受けしますので今回は該当しません。

「特定支出控除」の対象になる可能性

ほかに「今から間に合う方法がないか……」と考えてみると、残されているのは「特定支出控除」です。

特定支出控除とは、「仕事に関係する支出はサラリーマンでも追加的にいくらかは経費として認めますよ」という制度です。控除を増やすのではなく、経費を増やすことで児童手当の所得制限計算の対象となる所得を減らしてしまうのです。

その条件は以下の通りです。

(A)仕事に必要な、交通費・スーツ代・本・資格取得・交際費等であること
(B)「給与所得控除」金額の1/2を超える金額部分であること
(C)領収書があり、かつ給与を支払っている会社の承認があること

今からでも間に合うかどうか、となると、ネックは(C)の会社の承認条件になると思います。

「仕事のための引越しがあった」「スーツをたくさん新調した」「資格取得のために専門学校に行った」などという方は領収書をかき集めて、会社の承認を貰ってみてはいかがでしょうか?

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