はじめに

10月下旬から11月上旬にかけ行われた決算発表にともない、株主優待を廃止する企業が相次ぎましたが、一方で株主優待を拡充・新規導入する企業も数多く見られました。その背景には東京証券取引所(以下東証)による市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の存在があります。「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」と題し、各企業に対して題目のとおり要請を行っています。


今年7月14日時点の調査で3月決算企業のうち、プライム市場では31%、スタンダード市場で14%が開示を行っています。PBR(株価純資産倍率)が低い企業、また、時価総額が高い企業ほど開示が進み、PBR 1倍未満かつ時価総額1,000億円以上のプライム市場上場企業では45%が開示を行っています。銀行業は約7割が開示をしています。一方でPBRが高い情報・通信業、サービス業、小売業、時価総額が小さい企業ではあまり開示が進んでいない状況です。

今回の決算発表後、株価動向を調べてみると株主優待を拡充・新規導入した企業は株価が上昇傾向であることが分かりました。

株主優待の内容を変更した7社

【1】オロ(3983)は新たに株主優待の導入を決め、毎年12月末に100株以上の株主を対象にQUOカード3,000円分を贈呈するとしました。発表前の株価は2,100円台で推移していましたが発表翌日は2,510円をつけ、発表5日後には2,706円まで上昇しました。2023年12月期の期末配当予想(期末一括配当)を20円から30円に増配することも併せて発表しています。

【2】アークランズ(9842)はホームセンター事業や外食の「かつや」が有名ですが100株以上の保有で「かつや」のほか、グループ店舗で使える優待利用割引券1,100円分(550円×2枚)を年2回贈呈すると発表しました。発表前は1,600円前後で推移していた株価ですが発表後は1,700円まで上昇しています。

【3】イルグルム(3690)は100株以上保有の株主に年2回、Amazonギフト券1,000円を贈呈すると発表しました。発表前は400円台だった株価が発表翌日は617円をつけ、約3週間後には702円まで上昇しました。

【4】ルックHD(8029・旧レナウンルック)は100株以上保有の株主に4,000円分の株主優待商品券を贈呈すると発表しました。4,000円のお楽しみ詰め合わせパックと交換でき、パックの中身は1万円相当の商品が入っています。ブランドは「イルビゾンテ」「マリメッコ」「A.P.C.」などから選べる内容です。変更前は2000円分の「割引券」の贈呈でしたが「商品券」に変更になったことでお得感が増したようです。発表前の株価は1,900円台後半でしたが翌営業日の11月13日は2,172円まで上昇し、月末には2,483円の終値をつけています。

【5】大成温調(1904)は「株主優待を廃止・縮小する企業が続々!逆に拡充する企業も…狙いと株価への影響は?」の記事でお伝えしたとおり、優待拡充発表前は株価が2400円前後で推移していましたが、発表翌日の14日は寄付きから2,916円でストップ高、17日の終値は3,600円、24日に4,225円をつけました。

【6】トーヨーアサノ(5271)はこれまで500株以上保有の株主を対象としていた優待を300株以上の保有で対象となるように拡充しました。300株以上の保有で5,000円分相当の商品などが贈呈される内容です。発表前は1,800円前後だった株価は発表後2,000円を超えて推移しています。

【7】ホリイフードサービス(3077)は11月7日株主優待の廃止を発表しました。発表前400円台後半で推移していた株価は発表翌日にストップ安となりその後も下落を続け200円台後半で推移していて、株主の失望売りと思われます。100株以上の保有でお米券をもらえる優待内容でした。

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