はじめに
利率と利回り。何となく同じもののように見えて、でもなぜ言い方が違うのか、不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。でも、両者はまったく異なる概念なのです。
預貯金の収益率は「利率」で表示
預貯金や投資信託、株式、債券など、さまざまな金融商品で資産運用をするようになると、何となくわかったような気になっているけれども、実はよく分からないことが、いくつか出てきます。
「利率と利回り」もそのひとつでしょう。「利率と利回りの違いは何ですか?」と質問されて、それに答えられますか? どちらも同じようなものというイメージを持たれている方も多いと思います。でも、この両者には明確な違いがあり、それを理解しておかないと、商品の説明を受けても何を言っているのか分からない、といったことになる恐れがあるので、しっかり理解してしまいましょう。
まず利率から説明していきます。
利率とは、元金(元本)に対する利子(利息)の割合を言います。たとえば元金が100万円で、それに対して年1万円の利子が発生するとしたら、この金融商品の年利率は1%です。運用商品で言うと、預貯金の収益性は、この利率で表示されます。
「利回り」は投資商品の収益性を示している
次に利回りですが、これはどちらかというと投資商品の収益性を示すものと考えて下さい。値動きのある投資商品の、投資元本に対して得られた収益の割合を言います。
たとえば、1株1000円の株価で購入した株式が年50円の配当金を出したとしましょう。購入した時の株価1000円に対する年50円の配当金の利回りを「配当利回り」といって、このケースでは年5%になります。
では、この会社の株価が1000円から800円に値下がりしたとしましょう。配当金は変わらず50円でした。この場合の配当利回りは、年6%になります。
この事例を見ると分かると思うのですが、価格と利回りは逆の相関関係があります。つまり、価格が上昇すると利回りは低下し、価格が下落すると利回りは上昇するのです。債券の場合も同様です。これは前回も説明しましたが、債券は額面金額に対し、発行時に決められた利率に応じて利子が支払われます。
たとえば額面金額が100円で利率が2%だとしたら、額面100円に対して毎年2円ずつの利子が支払われます。ところが債券は、償還を迎えるまでの間、債券市場で売買できます。この売買を行う際には、額面金額で取引するのではなく、「額面金額が100円で利率2%の債券を、いくらで売買するか」という観点で取引されます。このいくらで売買するかが、債券価格です。