はじめに
不動産の所有者にかかる費用の一つに、「固定資産税」があります。土地、建物にかかわらず、不動産にはすべて、市町村役場が定めた固定資産評価額が決められています。この評価額とは、不動産鑑定士などの有識者の意見も交え、客観的な立場から不動産の価値(時価)を鑑定して算出されたものです。たとえば、建物の築年数が経過すれば、その分だけ価値は下がり、他方、都市開発などによって土地の相場が高騰した場合には、そのぶんだけ価値が上がるわけですが、これらを評価額として反映させているのです。
この評価額に所定の税率をかけたものが「固定資産税」であり、すべての不動産に評価額がある以上、不動産の所有者は固定資産税を毎年納める義務があるのです。不動産の規模や地域性によって大きく異なりますが、たとえば一軒家やマンションをマイホームで所有している場合には年間数万~十数万程度、投資用のアパートやマンション経営をしている場合には、年間数十万近い納税をしていることもあります。
しかし、なかには「固定資産税が0円の不動産」というものがあります。しかし、これは認知度が低いため、なかには「一向に納税書類が届かないが、もしかして自分の手続きミスで書類が届かず、実はとんでもない滞納をしてしまっているのではないか」と不安を募らせる不動産所有者もいるほどです。
毎年納税することが当然である固定資産税。それが0円というのは、一体どんな不動産なのでしょうか。今回は、固定資産税0円の不動産とはどんな不動産なのか、そして、あまり知られていない”固定資産税0円不動産の活用法”についてもご紹介します。
資産価値が低い(?)不動産
さて、固定資産税0円の不動産は、どんな不動産なのでしょうか。その答えは、おもに「公共性」か「資産価値の低さ」がポイントになります。
<グループ1>公共性の高い不動産
固定資産税の徴収背景には、所得税などの累進課税と同様に、「富の再分配」の思想があるものと思われます。つまり、乱暴にいえば「不動産を持っている人は、それなりに財産を持っているだろう」という考え方です。
そのため、言いかえれば特定の個人に富が集中していると解釈することが難しい不動産は、固定資産税の課税対象外となっています。
①道路
不特定多数の人が通行する道路は、固定資産税が0円になります。これは国道や市道だけでなく、私道でも該当します。「通行」という、多くの人の利益に繋がっている土地といえますので、公共性が高い私道と判断されれば、個人所有であっても課税されません。
なお、特定の個人だけが通行している道路や通路の場合は、公共性が低いとされ、道路にもかかわらず課税されるケースもあります。
②保安林
日本の国土の約3分の2は山林が占めていますが、その山林の中に「保安林」と呼ばれる山林があります。保安林とは、たとえば水源の保持、土砂災害の防止、生活環境の向上といった目的で、「山林の状態であることが、国の治安につながる」と判断された場所の山林を指します。
保安林は、都道府県や国によって指定され、国有林だけでなく、個人が所有する私有林であっても指定されている場合があります。保安林に指定されると、一般的な山林以上に、住宅地への転用はもちろん、木の伐採についても、さまざまな厳しい利用制限や維持管理に関する責任を負い、基本的に”所有者の思うように使用できない”土地となります。
このような特殊な制約を課せられることから、保安林も固定資産税は課税されないことになっています。
③国や市町村役場が所有している不動産
国や市町村役場が所有する不動産も、固定資産税は課税されません。たとえば学校や公園、公共の墓地などは、直感的にも公共性が高いことはイメージしやすいと思います。