はじめに

日本の家計が保有している金融資産は、なんと2100兆円を超えています(日本銀行「資産循環統計」2023年)。個人の金融資産の約6割を保有しているのが、60歳以降の高齢者です。その内訳は60代の人が33.9%で70歳以降が24.8%です。

しかし、周りを見ても必ずしも、そう見えない家庭が多いと感じます。老後資金を準備しているけど、そんな素振りは見せないようにしているのでしょうか?

実際のところ、どのくらいの老後資金を準備しているのでしょうか。また、もし準備できなかった場合の対策について解説していきましょう。


60代の平均貯蓄額は2000万円を大きく上回っている

総務省の「家計調査(貯蓄・負債編)2022年)」をみると、60~69歳の平均貯蓄額は2468万円です。年代別の貯蓄額では、もっとも多くの貯蓄を持っている年代です。ただ、平均で2000万円以上の貯蓄があるというデータを見ても、あれっ?というイメージを持つのではないでしょうか。もし貯蓄が2000万円以上もあれば、そもそも「老後資金2000万円問題」なんて騒ぎは起こらなかったでしょう。それでは、別のデータを見てみましょう。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」によると60代の平均金融資産の保有額は、2317万円で、やはり総務省のデータに近いです。ところが、中央値は750万円で平均とは大きく離れた数字になっています。このデータから、資産が多い人と少ない人の二極化が進んでいることがわかります。

60歳のときの金融資産については、PGF生命の「2022年の還暦人に関する調査」を見てみます。平均貯蓄額は3454万円です。しかし、もっとも回答が多かったのは、100万円以下で25.2%もいました。1000万円未満は、54.2%で5割以上の人が老後資金の準備ができていないと言っていいでしょう。その一方で1億円以上の人が9.7%、5000万円以上の人は17.3%で、25%以上の人は老後資金の準備ができています。

60代がもっとも資産格差が開いている時期

60代は、平均的に金融資産がもっとも多い時期にあたります。現役時代に貯めたお金に加え、保険が満期を迎える、退職金を受け取ったなどの理由が考えられます。60代を過ぎると、給与は下がるため金融資産も少しずつ減っては来ますが、70代になっても多くの金融資産を保有してる方もいます。だからこそ、お金(貯蓄)の格差がもっとも如実に表れるのがこの60代だと言えます。

20代・30代は、そもそも金融資産の保有残高が多くありません。資産形成もまだ途中の段階なので、その差は多くはありません。40代・50代になって、その金融資産の保有額に差が付いてきます。そして、もっとも顕著なのが60代なのです。つまるところ、60代の人がもっている金融資産は、以前から始めた資産形成によるもので、すぐに取り返せるかというとかなり難しいでしょう。

では、60代で、資産形成の「勝ち組」と「負け組」が決定されてしまうのでしょうか。じつは出遅れた人もここから挽回することができるのです。というよりもここで挽回するしかないのです。

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