はじめに

2024年中に政策変更はないサブシナリオを考えられる理由

4月がメインシナリオならば、1月や3月はサブシナリオか?と問われれば、答えはNoです。ではサブシナリオは何か? 2024年中の政策変更はなし、がサブシナリオです。

その理由は、日銀はマイナス金利解除を急ぐ必要がないからです。これがサブシナリオの根拠です。なぜ日銀はマイナス金利解除を急ぐ必要がないのか。それはマイナス金利解除は、あくまでも「金融政策の正常化(への一歩)」であって、いわゆる金融引き締めとしての「利上げ」ではないからです。そして、日銀が金融引き締めとしての「利上げ」を急ぐ必要がないのは、インフレが落ち着いてきているからです。

2022年から2023年前半にかけて米国のFRB(米連邦準備制度理事会)や欧州のECB(欧州中央銀行)など海外の中央銀行が急速な利上げをおこなってきたのは、歴史的な高さに跳ね上がったインフレを抑制することが目的でした。海外のインフレはようやくピークを超え、徐々に沈静化しています。日本でもインフレ率が高まった主な理由は、この海外のインフレが波及したからです。したがって、おおもとの海外のインフレが収まってきたならば、時間差を伴って日本のインフレもピークアウトするのが当然の成り行きでしょう。

実際のところ、2023年11月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は前年同月比2.5%と2022年7月以来の低い伸び率となっています。企業の間で取り引きされるモノの価格を示す企業物価指数は11月の前年同月比は0.3%上昇と2年9ヶ月ぶりの低い水準となりました。一時、高い時には10%を越えていたのに、足元では伸びはほぼゼロです。

モノの価格の値上がりは着実に鈍化していますが、サービス価格は上昇が続いています。ではこれを抑制しようと利上げをおこなうべきでしょうか。サービス価格の上昇は人手不足などを背景とする人件費の上昇が要因です。すなわち賃金が上がっているわけです。ここで前述した日銀が目指す「賃金と物価の好循環」というキーワードを思い出してください。モノの値段は落ち着き、賃金は上がる。これぞ望ましい環境に向かってきています。この流れを変える必要などどこにもありません。

0%を越える「利上げ」は当面先か

マイナス金利政策は、非伝統的政策であり、いわば非常時の対応です。日本経済が本当にデフレを脱却し、正常なマイルドなインフレが定着する経済になれば、マイナス金利政策の解除は当然です。不自然なことはやめるのが良いのです。それと、景気の過熱を抑制する目的でおこなわれる金融引き締め(=利上げ)はまったく別物です。したがって日銀は「賃金と物価の好循環」が確認できれば2024年4月以降にマイナス金利政策の解除、すなわち、マイナス0.1%の政策金利を0%にすることはあっても、0%を越える「利上げ」はまだ当面先のこととなるでしょう。

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