はじめに

皆さんは「コップのフチ子」をご存知でしょうか。

2012年7月にカプセルトイ、いわゆるガチャガチャ用の玩具として発売され、1週間で10万個以上が完売。全国的なブームを巻き起こし、これまでに累計2000万個を販売した、ガチャガチャ界の大ヒット商品です。

そんなコップのフチ子の誕生5周年を記念した展覧会「あなただけのフチ子展」が、12月1日から18日まで池袋パルコで開かれています。なぜフチ子がここまでロングセラーのヒット商品になりえたのか。その奥深い世界観をのぞいてみました。


フチ子ワールド全開の展覧会

池袋パルコ7階の「PARCO MUSEUM」。入口に立つと、巨大なフチ子さん(コップのフチ子ファンは敬愛の念を込めて「フチ子さん」と呼ぶそうです)の顔面パネルが来場者を出迎えます。

会場の中に入ると、最初に目に飛び込んでくるのが、数十体のフチ子さんが飾られたメリーゴーランド。初っ端から何ともシュールなフチ子ワールドが広がります。


フチ子さんだらけのメリーゴーランド

次の空間に足を進めると、発売から5年間の年表とともに、これまでに販売してきた1500種類のフチ子さんがずらりと展示されています。撮影時の反射などに配慮して、あえてケースなどを設置しなかったそうです。

この中でも見どころは、日本では販売されていない、台湾限定のフチ子さん。実は今、台湾では日本以上にフチ子さんの人気が高まっており、昨年の年末に現地で開催した展覧会には、有料にもかかわらず、4万人以上が来場しました。現地のコンビニではキャンペーンのキャラクターにも起用されていて、販売数自体も急激な伸びを示しているそうです。


台湾限定商品の「世界のフチ子」

「あなただけのフチ子」の深い意味

今回の展覧会の目玉は、これだけではありません。展示スペースの後に設置されている物販コーナーでは、このイベント限定の商品がガチャガチャで販売されています。

その名も「着せ替えのフチ子」。ガチャガチャ業界では初となるパーツごとの部分販売で、顔・ボディ・足・バッグがそれぞれ6種類ずつ、価格は1個200円となっています。

なぜ、こんな業界初の試みにチャレンジしたのか。フチ子さんを企画・販売している奇譚クラブの広報、しきせいたさんが開発秘話を教えてくれました。

「誕生5周年でこだわったフチ子さんを作ろうとしていたら、ガチャガチャでは販売できない製造原価になりました。これはヤバいということになったのですが、パーツに分けて販売できないかという話が出てきました。これならクオリティも上げられるし、いろいろな組み合わせが作れて、お客さんも楽しい。まさに逆転の発想です」


「着せ替えのフチ子」は1296通りの組み合わせが可能

実は、今回の「あなただけのフチ子展」という名称も、この着せ替えのフチ子を意識したものなのです。各パーツを組み合わせると、実に1296通りものフチ子さんを作ることができます。文字通り、この展覧会に来て、ガチャガチャを回せば、自分だけのフチ子さんが手に入るというわけです。

「今回はトライアルですが、好評であれば、通常販売のラインナップに加えることも検討しています」と、しきさんは明かします。

シュールな磁力で世界へはばたく

ガチャガチャ発祥のキャラクターで5年も販売が続いているのは珍しいといいます。ましてや、展覧会を開くのはフチ子さんくらい。何が彼女の人気を支えているのでしょうか。しきさんの分析はこうです。

「ガツガツしなかったからではないでしょうか。ブームの時も、ガチャガチャ以外のさまざまな事業展開についてお話をいただきましたが、お断りしてきました。われわれ自身、ガチャガチャが好きだったので、他に興味がなかったからです。それがファンの皆さんに、ほどよい渇望感を生んだのかもしれません」

奇譚クラブの展開する商品の中で、フチ子さんに次ぐ人気商品でも累計販売は300万個。フチ子さんの2000万個がいかに驚異的な数字かがわかります。さすがにブームが起きた2013年に比べると売れ行きは鈍っていますが、それでも通常の商品と比較すれば「すごい売り上げをキープしています」(しきさん)。

今回のイベントには、こうしたフチ子さんの現状にもう一段のブーストをかけたいという狙いもあります。台湾からは、早くも次の展覧会の依頼が届いているといいます。「世界進出が見えているので、それを視野に入れた展覧会です」と、しきさん。

独特な世界観で、多くのファンを魅了し続けているフチ子さん。5年の歳月を経て、そのシュールな磁力は世界へ広がろうとしています。

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